鮨屋の常識・隠語 /「兄貴」と聞こえたら!? | SUSHI TIMES

鮨屋の常識・隠語 /「兄貴」と聞こえたら!?

■江戸前の粋から生まれた鮨屋の文化


ギョク、アガリ…お鮨屋さんならではの隠語はけっこうある。職人同士の会話を素人が聞いたらちんぷんかんぷんである。なぜ寿司屋にはこんなにも隠語が多いのか調べてみた。

 

 

■カウンター商売ならではの悩みから生まれた隠語


鮨にまつわる隠語は江戸ならではの文化背景から生まれていた。主に2つの理由をあげてみる。


①お客さんと寿司職人さんの距離が近いため


鮨屋の中ではネタの鮮度を問うなど、あまりお客さんに聞かれたくない業務連絡も多々ある。カウンター越しに至近距離で接客をする鮨屋では職人同士のやり取りが筒抜けになってしまうため、隠語で内容がわからないように工夫したのだ。


②江戸前の粋と連帯感を表現するため


江戸時代は言葉遊びが流行っており、粋な江戸っ子たちは新しい言葉の発明するのが得意だった。例えば酢飯をシャリと呼ぶのは、米粒の形を観音様の喉仏に例えているからだという。このように他の人にわからないような「業界用語」がかっこよく聞こえるのは、きっと今の時代も同じようなことだろう。また、狭い江戸の中で、連帯感を持って暮らしていた人々は自分たちだけの間で通じる言葉で結束を高めていたのではないかとも言われている。

 

■隠語のいろいろ


鮨屋の隠語はざっとあげてもこんなにある。


■あがり
お茶のこと。もとは花柳界から来た言葉で「最後のもの」という意味があります。 すごろくのゴールや演芸での最後のお囃子が同じように「あがり」と呼ばれていて、 多くのお店では粉茶や番茶が出されます。


■あにき
寿司屋の隠語。これは先に使う材料のことをいいます。 反対にあとから使う食材を「おとうと」といいます。


■あらじこみ
ある程度材料を使える状態まで処理しておくこと。 さらに材料の仕込みが行われたのを「なかじこみ」といいます。


■オドリ
車えびのにぎりで活きたまま握ったもの。車えびが踊るように動くことから。


■かっぱ
きゅうりのこと。きゅうりの切り口がかっぱの頭のさらに似ているとか、かっぱの好物という所からきています。


■がり
しょうがのこと。噛んだときの音が「ガリガリ」という歯ごたえの音からきています。 がりには魚の生臭みを取ったりする口直しの役目のほかに、殺菌作用の役目もあります。


■ギョク(玉)
玉子焼きのこと。漢字の玉の音読みからきています。


■クサ
海苔のこと。海苔を「海草」という所からこう呼ばれています。


■軍艦巻き
しゃりとねたを海苔でくるんだ寿司のこと。いくら、うに、小柱などがあります。


■げそ
イカの足のこと。脱いだ履物を「下足(げそく)」と呼んだことから。


■げた
寿司をのせるもの。横から見ると下駄のように見えることから。


■しゃり
寿司飯のこと。仏舎利(お釈迦様の遺骨)からきています。地域によっては「赤シャリ」と呼ばれるしゃりもあります。これは酒粕を数年熟成させると酒粕の色が赤く変化し、この貯蔵酢と米を主原料にして作られた酢を「赤酢」といい、 それを使ったしゃりをいいます


■たち
昔は寿司屋は店のほかに屋台という形の寿司屋もありました。昔は座って握っていました。 終戦後、衛生上の都合から店内で握られるようになり、店内で立って握ったことから「たち」と呼ばれるようになりました。


■タネ、ネタ
寿司の材料のこと。


■づけ
まぐろを醤油だれに漬け込んだもの。「漬ける」という所からきています。 昔は魚を長く保存されるために漬け込む技術が使われました。


■つけ場
寿司屋の調理場のこと。寿司を作ることや出すことを「つける」と呼ばれていたという説と、 昔の寿司が魚の漬け込みだったことからこう呼ばれる説もあります。


■つめ(煮つめ)
穴子を煮た汁を煮つめて作った甘いたれのこと。穴子やしゃこなどに塗ります。


■鉄火
マグロの赤身を中心に巻いたのり巻きのこと。昔、賭博場を鉄火場と呼んでいて、 博打を打ちながら食べやすいように作ったのり巻きからきています。


■てんち
材料の頭と尾の部分。


■とろ
マグロの腹身のこと。脂肪が多く「とろっ」としたところから。


■どんしゃり
寿司飯ではない普通のご飯のこと。


■なみだ
わさびのこと。ききすぎると涙が出てくるということからきています。


醤油に酒などを加えて煮きり、醤油の臭みを消したもの。


■光もの
寿司だねのなかで皮の光った魚。こはだ、あじ、さんま、いわしなどの魚のことを言います。


■むらさき
お醤油のこと。醤油の色からきています。


■ヤマ
笹のこと。山で取れることからこのように呼ばれています。

 
出典:錦寿司 寿司用語辞典
 

 

■数字の数え方


数え方にも、鮨屋ならではの隠語がある。あなたはどこまで隠語で数えられるだろうか?


1⇒ピン、そく
2⇒リャン、ののじ
3⇒きり、げた(下駄には穴が三つあるから)
4⇒だり
5⇒め、めのじ(目は5画)、がれん
6⇒ろんじ
7⇒せいなん(西南を指す)
8⇒ばんど(はちまき)
9⇒きわ
10⇒ピンコロ、よろず、ちょう(丁)

100くらいまでなら隠語で数えられるらしい。

 
出典:HAYA技 知っても知らなくてもいいお寿司屋さんの粋な数の数え方(隠語・符牒)
 

■鮨屋の隠語は職人もの。お客は使わない方がベター


ツウを気取って、あるいは当たり前だと思って隠語を使うお客も珍しくはないが、これはあまりマナーとして歓迎されない。そもそも隠語はお客に悟られないように職人同士でコミュニケーションを取るための手段なのだから、お客は一般の言葉で注文した方が良いのだ。
 
ちなみに会計時によく使う「おあいそ」という言い回しにも注意が必要。
「おあいそ」は、漢字で書くと「お愛想」となる。さらに、「お愛想」は「愛想尽かし」を省略した言葉である。元々は遊郭で使われていた言葉だ。お客がお気に入りだった女郎に対する愛情をなくして「もうお店に来たくない!」という状態を「愛想尽かし」と呼んでいた。飲食店で、客がお店側に対して「おあいそで!」というのは「このお店には愛想が尽きたからもう来ません!」という意味にとらえられる可能性もあるので避けたい。
お会計、お勘定、チェックなどの言い方が無難だろう。

 
出典:macaroni