スシロー/水留社長が語る「強さの秘密」(前編・ぶれない寿司へのこだわり) | SUSHI TIMES

スシロー/水留社長が語る「強さの秘密」(前編・ぶれない寿司へのこだわり)

■「スシロー」快進撃の背景に

 

あきんどスシローを展開するスシローグローバルホールディングスは、2017年3月期に売上高1564億円、営業利益92億円と33期連続で増収記録を達成。スシローは2011年3月に回転寿司売上日本一を達成して以来、回転寿司業界No.1の地位を独占している。しかしこれまでの道のりは決して平坦ではなかった。

2006年に創業者の清水義雄氏が引退した。その後2007年にゼンショーが筆頭株主となり、かっぱ寿司との経営統合を提案されたことを受け、投資ファンドのユニゾン・キャピタル傘下なった。これ以降、2017年まで投資ファンドの傘下で経営を続けることになる。次々と変わる資本と経営陣の中にあっても一貫して成長を続けるスシローの強さの秘密と、投資ファンドの役割、経営のポイントについて、水留浩一社長が語った。

■「うまいすしを、腹一杯。」ぶれなかった寿司へのこだわり

 

――スシローの経営体制は、創業者の引退後、投資ファンドのユニゾン・キャピタル、ペルミラが参加し、数年単位で変わり続けていますが、一貫して成長できた要因は何ですか。


水留 旨さへのこだわり、寿司のクオリティへのこだわりというのは、マネジメントや株主が変遷しても変わらなかった。結局、お客様からすると、社長が誰だろうと株主が誰だろうと関係ないわけですよ。お店に行って美味しいお寿司が安く食べられたら、また来てくれるわけです。お客様に対する接点というか、提供しているものをぶらさずにきたのが、変に業績の波だとかが起きなかった理由だと思います。

 

――なぜ、ぶれない企業風土が作れたのですか。


水留 それは、創業者が偉大だった。回転寿司を始める前の創業時から、できるだけお客様に安くていいものを出そう、寿司の半分はお客様にお返ししようということで、原価率を50%くらい、しっかりと使って提供するというのが、不文律的に、会社の中でDNA的にしっかり根付いていた。それを最初のファンドであるユニゾンも、二番目のファンドのペルミラも、そこは大事だということで、しっかりと認識をした。だから、原価を落として利益をもっと出しましょうみたいなことは求めてこなかった。


――投資ファンドが企業風土を尊重したということですか。


水留 尊重したというよりも、そこがスシローの強さだから、それを崩したらスシローの強さをなくすことになって、企業価値を落としてしまうと考えて、正しく判断したと思う。


――原価率約50%というのが強さの源泉ですか。

 
水留 そこは象徴的にあるんですけど、その背景は何かというと、「とにかく、おいしくて旨いものを出そうよ」ということです。原価率約50%というのは、どちらかというと象徴的なところで、それぐらいしっかりいいものを出すんだというのが、思想的にしっかりとつながっている。


――スシローの強さを守りつつ、マネジメントで気をつけていることは何ですか。


水留 発想としては、強いところを伸ばしてあげた方が、会社として良くなるので、寿司に対するこだわりだとか、旨さに対するこだわりという部分を伸ばすようなマネジメントを志向しています。どうしてもファンドの時代が長かった中で、原価率約50%という話は守っていたけども、会社全体としては、チェーンストア化というか、標準化というか、よりコピーできるモデルにしようという流れが強く働いてきたと思うんです。僕はどちらかというと自由演技を求める方で、店長であれば、店長がそれぞれの発想で、お店を良くする。そこにあまり枠をはめないほうなんですね。ただ、それをやっていくと、やっぱり統制というのは効きにくくなる。統制が全く効かなくなるのは良くないんですけど、統制よりも自由演技で、もっとお客様に喜んでもらうほうに、指示を出している。一方で、自由演技は認めるけども、守るところは守る。例えば、数字はしっかりと意識をして管理をしなければいけない。

 

■ビジネスモデルの基本は、売上、原価、労務費の管理


――現場レベルで守る数字として何を重視していますか。


水留 スシローのビジネスモデルはシンプルで、売上があって、原価があって、労務費がある。その三つが一番大事なところです。もちろん販管費もありまけど、家賃は毎月変わるわけではないから、水道光熱費だとか細かい項目もあるんだけどね。
一番は売上がしっかりあることが大切で、また、原価が低くなりすぎてもいけない。50%近い、我々がある程度、設計している原価率はしっかりと使わなければいけない。労務費も低くなりすぎると、当然、店舗で働いている従業員にしわ寄せがいっているので、低すぎてもいけない。もちろん超えてもいけない。そこは、店長、課長がしっかりとコントロールできていれば、大きく数字はぶれない。

 

――店長のマネジメント力というのは、水留社長が就任した時には確立していましたか。


水留 どうですかね。どちらかというとルールを守るというところは、随分と強制をされているようなところがありましたけども、個性を出すというところは、どちらかというと失いかけてたかなと思います。

 

――個性をなくした原因は、投資ファンドのペルミラの意向ですか。


水留 そうではありません。ペルミラは個性をなくせとは言わないから。どちらかというと、コントロールをしようとすると、個性が邪魔になるんですよ。だから、コントロールが強いマネジメントをしようとする時は、そうなる。私が入る前の経営陣が、統制を効かせる方向に少し振ってたのかなと思いますね。

 

――コントロールすべき時期であったということですか。


水留 コントロールする時期でもあったし、やっぱり、利益を安定的に、着実に出すことを求められると、そちらに走りがちになるという感じですかね。

 

――数字以外にマネジメントで守らせるところは。


水留 いっぱいあるんですよ。例えば、うちでいうと衛生というのはすごく大事で、品質管理のチームとかも、実際にお店にいって確認、チェックをしますけど、手洗いの確認であるとか、いろいろ衛生面の確認というのは大事です。店長の評価なんかも、衛生面を重視していて、衛生面が守られていないと、評価が下がるといった仕組みも入っている。
あとは人が定着するというのが非常に大事なので、アルバイトやパートのスタッフの離職率がどうだとか、実際に何人くらいしっかりと働いてもらえているのかとか、そういう人の部分も大事な指標として追っかけている。

 

――店長の評価で、お客様の声はどう生かしていますか。


水留 もう1年以上たちますけど、お客様からの声というのも非常に大事なので、いまスシローを利用いただくとレシートの下にQRコードがあって、アンケートにお答えいただいている。回答するとちょっとしたインセンティブがもらえるものですが、何万というフィードバックがくるわけですよ。そこは店ごとにトレースして、それをひとつの店長や課長たちのKPI(重要業績評価指標)のようにとらえている。
やっぱりお客様がきちんと満足をしながら、売上をとり、コストを守り、利益を出す。シンプルにそういうことですよね。別にすごいマジックがあるわけでなくて、普通に考えたら、分かることをちゃんとやり続ける。

 
■1店あたり約3億3000万円の売上がもたらす従業員の待遇

 

――店長の評価指標の一つに人の定着がありましたが、人の採用状況はどうですか。


水留 社員の離職率は業界の中で相当、低い方だと思います。うちは新入社員の半分以上がバイトあがりで入っています。これは業界の中では非常に珍しい。他の会社からは、「スシローさん、なんでそんなことができるんですか」って言われますけど。
うちは1店舗あたり社員が2、3人いますんで、バイトの子たちから見ると社員が身近にいて、社員の働く中身も見えるし、もっというと社員の生活水準も見えるわけで、「いいなあ、社員は」となる。うちは副店長から家を建てる人もいますからね。そういうのを見てると、やっぱり社員になりたいよねと、思ってくれるわけですよね。店長で業績を上げれば、結構、いい給料もらえて、いい車に乗っている人もいますからね。そういう憧れ感がでるわけですよ。


――水留社長が就任する前から社員の待遇は良かったのですか。


水留 私が来る前に、ファンドが入ってから少し上がったんだと思います。インセンティブというか、結果を出した人間には、しっかりと金銭面でも対応する。うちの店長でも何十人単位で、半期で100万円以上の賞与をもらう人もいる。
それができるのは、うちのお店は1店舗あたり3億3000万円程度の売上があるわけですよ。それくらいのボリュームのビジネスを預かっているからこそ、高い水準の給料が払えるわけです。だから、そういうのを見ると、やりたいと思ってくれる学生の子も結構、多い。学歴も多様で、フリーターの人もいる中で、頑張りしだいでは、店長、課長になれる。今の営業本部長もアルバイトを経験し、高校卒業後に入社している。学歴に関係なく、経営層まで上がっていける体制であり、可能性がある。


――社員の離職率は何%くらいですか。


水留 いまは社員の離職率は11%くらいです。大体、飲食店の離職率の平均は30%程度なので、相当低いです。出戻りの社員も結構、います。「すいません。やっぱり帰ってきました。隣の芝生は結構、青かったです」といってね。うちは出戻りであっても変なペナルティは課さない。辞めたときの役職でまた採用しています。


――長時間労働が外食の一つの課題ですが、労務管理はどうされていますか。


水留 うちは労務は、ある意味きっちりやっているんですよ。転職して、外食から外食に移るケースもあるんで、他の外食に行くと「ひどい目にあいました。うちってちゃんとしてたんですね」という人もいる。これはファンドのいい部分なんですが、ファンドはコンプライアンスには非常にうるさいんですね。ファンドというのは、売り抜けなければならない。売る時は、買い手がコンプライアンスを調べるわけです。例えば、残業の未払いがないかとか、後々なにか訴えられることがないかとか、買う方は当然、気になるわけです。そういったところをクリーンするという機能というのが、ファンドにはある。労務管理をちゃんとやると、一瞬は競争力が落ちるんですよ。でも、中長期的にみるとね、そういう方が人が定着するし、こういう時代になっても、他よりも先に進んでいる分、安定的な経営ができる。


――いま、パート・アルバイト採用状況は厳しいですか。


水留 厳しいといえば厳しい。エリアによります。どちらかというと郊外で人口が薄いところはどうしても取り合いになる。ショッピングモールのような商業集積地への出店になると、人の取り合いは実際にあります。そこで時給が上がっている。昨日も地方店舗に行っていたんですけど、時給が950円とかです。モールでも人を採用するし、テナントさんも採用するし、どうしても人の取り合いになる。都心に近いと、結構、海外の留学生、学生、主婦、フリーターとか、いろいろな採用のリソースがあるんですね。郊外に行けば行くほど、選択肢が狭くなっていく。そういったところだと、他社との競争が激しくなるということがあります。

 


■水留浩一(みずとめ こういち)氏の略歴
 
1968年1月:生まれ(神奈川出身)
1991年3月:東京大学理学部卒業
1991年4月:電通入社
1996年2月:アンダーセンコンサルティング(現・アクセンチュア)入社
2000年4月:ローランド・ベルガー(日本法人)入社
2005年1月:ローランド・ベルガー(日本法人)代表取締役
2009年10月:企業再生支援機構(現・地域経済活性化支援機構)常務取締役
2010年1月:日本航空管財人代理として更生計画の策定・実行に着手
2010年12月:日本航空取締役副社長
2012年7月:ワールド常務執行役員
2013年6月:ワールド取締役専務執行役員
2015年1月:あきんどスシロー顧問
2015年2月:あきんどスシロー代表取締役社長(現任)
2015年3月:スシローグローバルホールディングス代表取締役社長CEO(現任)
2015年9月 :SUSHIRO KOREA,INC.理事(現任)
2015年10月 :スシロークリエイティブダイニング代表取締役(現任)
 
座右の銘:人事を尽くして天命を待つ

 

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出典:流通ニュース

 

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