スシロー/水留社長が語る「強さの秘密」(中編・やんちゃ、やろうよ) | SUSHI TIMES

スシロー/水留社長が語る「強さの秘密」(中編・やんちゃ、やろうよ)

■コンサル出身経営者の方針は「やんちゃ、やろう」


回転寿司業界No.1の売上を誇る「スシロー」の強さについて、前編では、うまい寿司を出したいスシローのDNAや社員のモチベーションを維持する労働環境が明らかになった。中編では、ファンド傘下でのマネジメントの実際やスシローの創業期を知る社員から社長になった豊﨑賢一前社長から、コンサルタント出身の経営者として社長交代した後、どうスシローをマネジメントしたのかを語ってもらった。現場に発信した最初のメッセージは意外にも「やんちゃ、やろう」だった。


■クビも辞さず、ファンドに対してもモノをいう経営


――コンプライアンスを守る面では、ファンドのメリットがありましたが、逆にファンドのデメリットは何ですか。


水留 これはファンドが、という問題ではないですが、やっぱりファンドの下で働くマネジメント(経営陣)がどうしても、ファンドを見すぎてしまうことがある。株主はファンドであり、ファンドに経営陣の生殺与奪権がある。ファンドは、社長をクビにしようと思ったら、クビにできてしまう。そういう中で、忖度するというか、ファンドを向いたマネジメントになりがちになる。これはスシローがという話ではありませんが、一般論として出てくる話です。


――水留社長のファンドに対するスタンスはどんな感じですか。


水留 僕は簡単です。クビにしたければすればいいじゃん、という考えです。それは自分の考え方として、自分にマーケットとしての価値があれば、別にクビにされたってどっかが引き取ってくれる、くらいな気持ちで生きていればいい。たまたま私はいろんなところをやってきたんで、そういう発想がある。一方で、やっぱり、その会社しかいなかった人からすると、そこに対する不安というのは、すごく強いわけですよ。外に出された時に、自分がどういう風に評価されて、次はどういう風にあるのかとか。やっぱり自然に不安になると思う。そういう意味で、ファンドを見すぎてしまうこともあると思う。


――ファンドは、企業を安く買って高く売るイメージがありますが。


水留 今の世の中は、ファンドが企業を安く買えない時代になっている。ペルミラの時もそうですけど、何社もの中から一番高く札を入れた人が買うわけです。今は、高く買って高く売りたい。買い手のファンドは、どうしたら企業価値が上がるかシナリオをもっている。シナリオがあるから、この値段で買っても自分たちは損をしない、利益がでるというストーリーをもって買いにくる。闇雲に買っているわけではない。


――経営陣の派遣以外にファンドが持つ機能にどんなものがありますか。


水留 ファンドが持っているシナリオがあるので、シナリオに対して支援をする感じです。もちろん、シナリオを実行する経営陣を選ぶ。既存の経営陣でそれができると思えば、変える必要はない。もちろん、資金の支援もする。非上場化してファンドの傘下にいる期間というのは、ファンドしか株主がいないので、配当する必要がない。配当を視野に入れているファンドもあるが、彼らはどちらかというと配当で利益を上げるという発想ではなくて、ある程度の投資をした上で、その先の企業価値を上げるという発想をする。基本的にはキャピタルゲインで投資を回収する。


――ペルミラの時代は、ファンドの資金を何に投資したんですか。


水留 ペルミラの時代は、ファンドの資金を出店に使いました。ずっと、20店くらいだった出店数を30店とか40店近くまで上げた。当然、それには資金が必要なので、出店に資本を集中して、成長を加速して、その先のキャピタルゲインを大きくしていった。


――回転寿司の出店資金はどれくらいですか。


水留 回転寿司の出店では、1店舗あたりで億を超える投資が必要です。うちは原価率を約50%使っています。競合が仮に同じように50%の原価率を使おうとすると、スシローぐらいの1店舗あたりの売上がないと、なかなか利益はでない。まったく無名のところが、スシローとおなじフォーマットで出店しても、お客さんは、取れない。そうすると絶対、利益はでないんですよ。だから、新規参入は難しいんですよ。売上があるから、原価率がかけられ、利益がでるという循環モデルがある。


■寿司職人の前社長から社長交代、社内に不安はなかったのか


――2015年2月の社長交代時は、会社の業績も堅調でした。なぜ、あのタイミングで社長交代だったんですか。


水留 将来の姿として、海外を含めていろいろ事業展開をする中で、オペレーションのコントロールがすごく秀でたマネジメントだけでは、なかなか次のシナリオを作っていくことが難しかった。ファンドは何を考えるかというと、その先にどういう風に絵を見せて、いい形で自分たちは売り抜けて、新しい株主を迎えるかということです。既存の延長線上で、次の成長ステージを描くのが、多分、やりきれない危惧を、当時のファンドはもったんじゃないかなと想像しています。


――寿司職人で現場を知り尽くした豊﨑前社長から、水留社長に交代するにあたって、社内で不安はなかったんですか。


水留 あまり社内に不安があると意識したことはなかった。顧問の肩書ではじめは入りますが、周りは社長になるという意識で私を見ています。どうなるんだろうとは思っていたとは思いますが、当然、私に対して「不安です」という人はいないわけです。別に、社内が不安そうだから、それを何とか払拭しようとしたことはないですね。最初、入った時に、役員、部長クラスと個別でいろいろ話を聞いたりしましたが、その時にいま、どういうところを自分として課題として思っているかとか、もっとこうなっていた方が会社って良くなるんじゃないかとか、そういうところを聞いていくんですけど。そういう中で、自分の思い、考えをしっかりと言える人間もいれば、何となくまだ距離感があって、「いや大丈夫です」みたいな人もいる。でも、何回か話をしていくうちに、だんだんと、会社の状況とか、みんなが何を考えているのか分かってきます。


――2012年9月のペルミラの資本参加から社長交代まで、少し間がありましたが、実務の豊﨑、管理の水留のように、二人三脚という選択肢はなかったんですか。


水留 会社というのは、トップが二人いてはだめなんですよ。どっちを見て、仕事をすればいいのか、動きをとればいいのか、みんながぶれてしまう。そこは、私がスシローを引き受ける上での前提で、そうじゃなければやりませんという話だった。
トップはそう思ってなくても、どうしても派閥っぽい、何とか派とかが社内にできてしまうのが一番良くないんです。そこはしっかりと線を引かなくてはいけない。豊﨑さんとも話した上で、社長交代をした。


――増収の中で会社を引き継いでいますが、プレッシャーはありましたか。


水留 マネジメントが変わるというのは、会社に課題があるから変わるわけで、その課題というのは、分かってましたからプレッシャーはないです。


――社長交代時の課題はなんでしたか。


水留 やっぱり成長性の部分で、新しいものがちょっと出なくなっていた。ちょっと下を向いて、元気がない部分が少し出ていた。次へのシナリオみたいなものが、ひとつ見えてこない。ユニゾンの時代で一番良かったのは、回転寿司日本一という、すごくクリアな目標があったんですね。分かりやすい目標が少し見えづらくなっていた。


■「やんちゃ、やろうよ」で、社員の本音を引き出す


――社長交代時に、社長として一番、社員に伝えていたメッセージはなんですか。


水留 「やんちゃ、やろうよ」です。店長会議とか、いろいろ周る中で、ちょっと下向きすぎてるんじゃないのとか、言ってました。社長交代時に、最初にやったのが、本社の幹部社員のヒアリングです。そのあと、各エリアで開かれる店長会議とかも周りました。全店長を集めたミーティングもやっています。どちらかというと、コミュニケーションサイドですね。こちらから情報発信する場合は、全店の店長を集めればいいですが、ツーウェイのコミュニケーションをとろうとすると、こちらから行く必要もある。店長会議の前後には、10人くらい集めて、飯を食ったりとか、当初はそういうこともやってました。当時の全店長と飯を食いました。


――オフィシャルな会議と食事をする場では、話す内容も変わってきますか。


水留 変わってきますけど、みんな緊張してますよ。「どこまで言っていいんだろう」という空気があります。お酒の場だと、本当にやんちゃをする人もたまにいますが。一緒に同席している課長が青くなってますよ。酒、飲んでますしね。


――飲みニケーションというのは、最近、なくなっているといいますが、重要ですか。


水留 酒がすべてじゃないですけど、どうしても社長という立場だと、普通に話す機会ってなかなかないじゃないですか。一方で、こっちは現場で本当に何が起こっているのか、どういう風に思っているのかを知りたいニーズがある。そういう場面というのは、やっぱり有効なところがある。
それこそ、企業再生支援機構で、日本航空(JAL)の再建で一緒に仕事をした稲盛和夫氏に言わせると、コンパだ、コンパだと。京セラはコンパというんですよ。必ずミーティングの後はコンパ。ただ、金をかけないから缶ビールと乾きものでコンパする。JALでもやってましたよ。缶ビールと乾きものなので、お店に行かないで会議室でやる。
スシローは、各エリアごとにコンパをするような場所がないから、店長会議の後に、安い居酒屋さんとかに集まってやってます。


――業績の悪い会社の特徴はなんですか。


水留 業績の悪い会社は、やっぱり透明じゃないんですね。透明だと上の人間は変なことができないんですよ。みんなに見えるから。スシローは、毎月、業績報告会があって、課長たちが自分の数字の報告をするんですけど、全員が全課長の数字を見れる。誰が、いい数字をあげている課長で、誰が苦戦している課長か、みんな分かるわけですよ。そうすると、業績悪い課長が部長になれるわけがないですよ。どんなに可愛くても、部長にできないですよね。必然的に上に上がる人は上がるし、必然的に下に下がる人は下がっていく。人事の透明性にもつながっていく。上司におもねったら、上になれるんじゃなくて、業績を上げた人が偉くなれる、当たり前の流れができる。

 


■水留浩一(みずとめ こういち)氏の略歴
 
1968年1月:生まれ(神奈川出身)
1991年3月:東京大学理学部卒業
1991年4月:電通入社
1996年2月:アンダーセンコンサルティング(現・アクセンチュア)入社
2000年4月:ローランド・ベルガー(日本法人)入社
2005年1月:ローランド・ベルガー(日本法人)代表取締役
2009年10月:企業再生支援機構(現・地域経済活性化支援機構)常務取締役
2010年1月:日本航空管財人代理として更生計画の策定・実行に着手
2010年12月:日本航空取締役副社長
2012年7月:ワールド常務執行役員
2013年6月:ワールド取締役専務執行役員
2015年1月:あきんどスシロー顧問
2015年2月:あきんどスシロー代表取締役社長(現任)
2015年3月:スシローグローバルホールディングス代表取締役社長CEO(現任)
2015年9月 :SUSHIRO KOREA,INC.理事(現任)
2015年10月 :スシロークリエイティブダイニング代表取締役(現任)
 
座右の銘:人事を尽くして天命を待つ

 
 
…元記事はこちら

出典:流通ニュース

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です