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マグロ仲買人たちのプライド、一流の仕事 -SUSHI TIMES ORIGINALS-

魚の仕入れは、鮨の生命線。中でも最上級の魚を扱うことができるのは、一部の仲買人だけと言われます。お鮨屋さんにとって彼らとの良好関係が鮨屋の命運を決めると言っても過言ではありません。

今、鮨職人のみならず魚の仲買人たちの世界にも注目が集まっています。

ここでは主に豊洲で活躍する仲卸と仲買人たちを紹介します。

やま幸

新時代の幕開けを見つめる日本一のマグロ仲卸人

ここ数年で銀座の高級鮨店をメインに日本全国から注文が殺到し、いま最も勢いがあると言われてるのがマグロ専門仲卸「やま幸」だ。築地で、83年もの歴史があり、世界最大の水産マーケットの中で、31店舗を持ち、トップクラスの売り上げを誇る。

オーナーの山口幸隆氏は、マグロ屋の番頭として名を馳せていた父の跡を継ぐ形で現在に至る。父親が大物であったがゆえに「親の七光だ」「お前は父親を超えられない」と揶揄されながらも、持ち前の負けん気とマグロへの弛まなき情熱をバネに「やま幸」を日本最大の卸売にまで成長させた。

2018年にはTVドキュメンタリー「情熱大陸」にも取り上げられ、日本中に名を知られる存在となった。

 

 

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目利き、仕入れは勿論、実際に包丁を入れてマグロの脂の乗り具合や旨味、甘味を見極め、顧客の好みやその店のシャリの特徴に応じて届け先を決めていく。名だたる高級すし店の職人からの信頼も厚く、今や国内だけでなくシンガポールやハワイの高級店がそのマグロを心待ちにするほどだ。

出典:情熱大陸

オーナーの山口幸隆氏はあるインタビューでこう語っている。

「ここ10年ぐらいで、つまみよりも鮨がメインになり、砂糖を入れずに酢と塩がきいた”強いシャリ”がブームになってきました。そうなってくると、色が長持ちして味があまりないマグロが合わなくなってくる。冷凍のマグロはまず合わず、生マグロでも実際に解体してみて我々が厳選したものでないと合わないんです。それで、私は昔から味のあるマグロを好んで買っていたので、それが時代にあってきました。」

山口氏ならではの時流を掴む力と長年のマグロに対する探究心が今の成功に繋がっているのだ。

出典:ポケットコンシェルジュ

フジタ水産

あの小野二郎も一目置く超一流の目利き

まぐろ専門の仲卸「フジタ水産」。代表取締役の藤田浩毅氏の哲学は「選ぶ基準は、味がすべて。味が良くなくては意味がありません。まぐろが10本入荷しても”一番”とされるものは1本だけ。その1本ですら気に入らないことは、よくあります。自分が旨いと思うまぐろしか、買いたくないんです」。

出典:GQJapan

 

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「20年前の三級品が今の一級品と、いうくらい違う。昔は、築地にはいいまぐろがいくらでもあって、好きなのを買えばよかった。でも今はとんでもない。そんなことをしていると手に入らなくなる」と二郎さん。禎一さんも口をそろえる。「今は”あてがいぶち”ですね。あるなかから選ぶしかない。だから、ある程度寝かせて熟成させて、旨味を引き出す技術がものをいう」。

長年築地の変遷を見てきた藤田氏だからこそ理解しているまぐろの真の価値。目利きとは、このような深い知識と長年の経験から生み出される特殊能力なのである。

出典:GQJapan

藤田氏が仲買人になるまで

藤田氏の父親も築地市場の仲買人だったが、アジ、さば、イカなどの小さな魚の仲買人だった。藤田氏も、大学卒業後、父親と一緒に仲買人を始め、アジやさばだけではなくて、黒いダイヤといわれるマグロにも当然のごとく興味を持っていく

藤田氏の転機は、ある一言。ある日マグロのセリ場で他の仲買人たちがやってるように、マグロの切り離された尾をさわっていると、それを見ていたマグロの仲買人に、「駄物屋はさわるんじゃねえ!」と大声で怒鳴られた

駄物屋とは、種類雑多な小さな魚を扱う仲買人に対する蔑称だ。

悔しくて涙が出たという藤田氏はまぐろの仲買人になってやると固く決意する。そこから藤田氏は、魚の切りつけのアルバイトを1日20時間こなし、初めのまぐろ1本を買うための資金を自分で貯めたという。

ここから這い上がる藤田氏の負けん気とマグロへの愛が半端ではない。

出典:https://40exchange.com/hujitahiroki-9077

石司

マルのままでまぐろの味を言い当てる目利きはまるで「魔法」のよう

現在、豊洲市場にはマグロを扱う店(仲卸)がおよそ200軒あると言われているが、石司はマグロの中でも、日本近海で獲れた生の本マグロ(黒マグロ)だけを厳選して扱う。石司三代目で若主人の篠田貴之氏はこう語る。

「多くの仲買人はマグロを競り落としてから、腹を割ってはじめて、その魚をどの鮨屋に売るのかを考えます。つまり後付けなんです。けれども、私は競り場の時点で、その魚の状態を見極めるように努めています。そして、お客様の好みにできるだけ近い魚だけを競り落とします。マグロに個体差があるように、マグロを扱う鮨職人にも個性があります。食感や柔らかさを重視する人もいれば、パッと色の映える魚を好む人もいる。その日の注文に合わせて、その魚の個性を見抜き、お客様に満足してもらう。それがプロの仕事であり、本当の目利きだと思っています」

出典:dancyu

「私たちはマグロのプロとして自信を持って「良いマグロ」をご提供させて頂いておりますが、一概に「良いマグロ」と言っても、お店独自の客層や客単価、店主様の好みもありますよね。そこをしっかりヒアリングした上で、1番合ったものをご提案させて頂くというのが私の役目だと思っています。お客様はお寿司・飲食店のプロ、職人ですからね。
例えばお寿司屋さんであればどんなシャリを使っているのか、更に敢えて店主の好きなお寿司屋さんを聞いたりもします。マグロのプロとして、その答えにあった物をお伝えするんです。」

「顧客目線の目利き」。ここに篠田氏のプライドと力量が現れている。

出典:豊洲市場の男

 

 

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