「すぎた」の仕事、づけ | SUSHI TIMES

「すぎた」の仕事、づけ

江戸前鮨の華、鮪。その赤身を醤油に漬け込んだ「づけ」は江戸後期から伝わる鮨屋仕事の一つである。その極意を名店がご開帳。

江戸前鮨は鮪なくして語れない。鮪の赤身を醤油に漬け込むことで独特の味わいが生まれる「づけ」は、店によって部位や漬け込み時間などが異なり、その味わいも千差万別だ。

「づけ」は魚を醤油に漬け込む仕事です。鮨屋でづけと言えば、鮪の赤身のづけ。私が小僧の頃は、赤身そのものもづけと呼んでいました。今では中とろや大とろをづけにする店もありますね。」。そう話すのは、真摯な仕事ぶりが光る江戸前鮨で、今や数ヶ月先まで予約で埋まる「日本橋蛎殻町 すぎた」の杉田孝明さん。江戸の一時期には大漁に獲れた鮪は、鯖や秋刀魚、鰯などと同様、大衆魚であり、下魚扱いであった。だが、明治になって屋台の鮨に鮪が登場するようになると次第に人気が高まり、やがて鮨種の定番になったという。

冷蔵設備もなく保存場所も限られていた当時は、酸化しやすい鮪はづけにして食べるのが一般的。とは言え、とろのような脂身は江戸っ子にはまだまだ敬遠されていたため、づけと言えば赤身のことだったのである。
「すぎた」のづけは天端(テンパ)と呼ばれる背の一番てっぺんのほとんど筋がない部分を使う。づけの味わいが店によって異なるのは、こうした部位の違いや、醤油の濃さ、漬け込み時間の長短ゆえ。早ければ30秒から1、2分。長ければ一晩漬け込むところもある。「鮪の香りを残したいと思ったら、早漬けに。醤油と相まったときの香りや、ねっとりとした食感を出したいと思ったら長く漬けます。昔の江戸前仕事には、湯引きしてからづけにする方法もあります」
奥が具買いづけの極意、ご開帳です。

店で出している「すぎた流」鮪のづけ

一、鮪を薄く切る
背に一番近い赤身の「天端」は血の香りが強く、身質が締まっているため醤油が入りやすい。これをそぐように暑さ3mmに切る。

※店では中とろに近い部分はそのまま赤身として握るか、刷毛で醤油をつけて1〜2分置いて出すなど使い分けているという。

二、づけ醤油に漬ける
漬け込む時間は2〜3分。醤油が勝ちすぎない、鮪の香りが残る程度が目安だ。このくらいの漬け時間だと、食感もそれほど変わらない。

三、汁気を拭く
づけ醤油から取り出した鮪はキッチンペーパーで挟み、表面の醤油をしっかり拭き取る。

四、握る
薄く大きく切った鮪を、軽く二つに折り畳んで握るのが「すぎた」流。醤油をまとって艶やかに光るづけは、酢飯と相まって一層香り高く、しっとりと口にほどける。

杉田孝明さん

2004年10月に東日本橋に「日本橋蛎殻町 都寿司」を回転。2015年秋に移転。店名を改め、現在の店に。超人気店だが驕ることなく、日々進化する鮨でお客を感動させてくれる。

出典:dancyu