保存版!一度は味わいたい名店の絶品まぐろ料理6つ | SUSHI TIMES

保存版!一度は味わいたい名店の絶品まぐろ料理6つ

日本人は、数々の調理法を編みだし、まぐろのあらゆる部位を味わい尽くしてきた。まぐろを極める東西6店の名物料理を紹介する。

※この記事は『サライ』本誌2016年12月号より転載しました。年齢・肩書き等の情報は取材時点のものです。(取材・文/関屋淳子、多田みのり 撮影/高橋昌嗣、藤田修平、小林禎弘)

■1:御料理 山さき(東京・神楽坂)の
【ねぎま鍋】
――トロの甘みを楽しむ江戸が生んだ伝統の味

■2:日本橋 寿司金(東京・四谷)の
【大トロあぶり丼】
――まぐろの部位の差を味わい芳醇な余韻に酔いしれる

■3:奥沢 すし 入船(東京・奥沢)の
【稀少部位のにぎり】
――炙ることで生まれる大トロの軽やかな甘み

■4:MEGRO(東京・本郷)の
【テールステーキ】
――まぐろの可能性を引き出す創作料理の数々

■5:まご茶亭(静岡・熱海)の
【まご茶漬け】
――まぐろを引き立てる技ありの京風出汁茶漬け

■6:旬味 まゆとろ(大阪市)の
【まぐろづくし懐石】
――様々な料理法で味わい尽くす まぐろを愛する関西の稀少店

■1:御料理 山さき(東京・神楽坂)の
【ねぎま鍋】
――トロの甘みを楽しむ江戸が生んだ伝統の味

今でこそ刺身や鮨種として好まれるまぐろのトロ部分。しかし江戸時代末、まぐろが江戸庶民の味覚として親しまれたのはもっぱら赤身で、あっさりとした赤身と醤油の組み合わせが人々の心を掴んでいた。

保存技術も乏しく、脂肪が多く傷みが早いトロは、葱とともに鍋に仕立て、脂を落として賞味。これが江戸料理を代表するひとつ、「ねぎま鍋」である。

ねぎま鍋のコース。野菜は葱、芹、独活(うど)、クレソン、和布(わかめ)。腹側より、背トロのほうが酸味があり、よりさっぱり。

ねぎま鍋のコース。野菜は葱、芹、独活(うど)、クレソン、和布(わかめ)。腹側より、背トロのほうが酸味があり、よりさっぱり。

東京・大塚にあった老舗江戸料理店『なべ家』で修業を重ね、神楽坂に鍋料理専門店『山さき』を開いた山崎美香さん(51歳)は、ねぎま鍋の魅力を次のように話す。

「まぐろの筋の部分が溶けるまでよく煮るのが美味しさの秘訣です。野菜は葱のほかに、香味がある芹や独活(うど)などが相性抜群です」

具材の火の通り具合を確認する山崎さん。14年前に『山さき』を開業。鍋のつゆは鰹かつおと昆布の出汁、酒、醤油、塩のみ。

店で仕入れるまぐろは冷凍の天然クロマグロ。「背トロ」と呼ばれる背中側のトロと、腹側のトロの2種類で、これを沸いたつゆの中に葱とともに入れる。厚さ1cm以上あるまぐろは、鍋に張られた少し濃いめのつゆの中に静かに沈んでいく。やがて、煮えて浮き上がってくる頃合いを計りながら、山崎さんが取り分けてくれる。

「私たち店の者が鍋奉行となり、一番美味しいタイミングでお取り分けします。ピンク色が残る半生状態が美味しそうだとおっしゃるお客様もいらっしゃいますが、決してそうではないんです。野菜も一度にすべてを入れてしまうのではなく、種類ごとの味わいを楽しんでいただきます」(山崎さん)

つゆの味を纏ったまぐろは、口の中でふんわりと解け、爽やかな脂の甘みがじんわりと広がる。粗く挽いた胡椒を添えれば、味と香りをピリリと引き締める。

江戸の知恵が生んだトロを旨く食す鍋。今では贅沢と思えるほどの味わいを、江戸情緒が残る神楽坂で堪能する。

コースは和え物や焼き物のお通し5品と、刺身、鍋。そして鍋の締めは、脂が溶け込んだつゆと胡椒を白飯にかけていただく。

【御料理 山さき】
東京都新宿区神楽坂4-2 福井ビル2階
電話:03・3267・2310
営業時間:18時~22時(入店は20時まで)
定休日:日曜、祝日 16席。要予約。
アクセス:都営大江戸線牛込神楽坂駅から徒歩約5分。JR・東京メトロほか飯田橋駅より徒歩約8分。

■2:日本橋 寿司金(東京・四谷)の
【大トロあぶり丼】
――まぐろの部位の差を味わい芳醇な余韻に酔いしれる

左から赤身のヅケ、中トロ、霜降りのカマトロ(カマ下)、すなずり、ひれ下。稀少部位はいつもあるとは限らず、すなずりやひれ下は一本から10貫ほどしか取れない。

かつて東京・日本橋にあった名店『日本橋 寿司金(きん)』から、昭和46年に暖簾分けをして、新宿・荒木町に店を構えるこの店。まぐろに精通する鮨屋として、鮨好きにはよく知られるところである。まぐろは築地の仲卸『石司(いしじ)』から仕入れる。取材日は青森・大間の延縄で揚げたクロマグロが届いたばかりであった。

美しく切り分けられた各部位。左から、ひれ下はスプーンで肉をそぎ落とす。カマ下、すなずり、中トロ、赤身。いずれも5日ほど経つと旨みが増してくるという。

「夏から秋のまぐろはサンマを餌にしていますが、秋から冬にはスルメイカを食べますから、脂の乗りがぐんとよくなります。まぐろが一番美味しい季節ですね」

こう話すのは半世紀以上、まぐろと向き合ってきた主人の秋山弘さん(80歳)。津軽海峡周辺のクロマグロが最上だと太鼓判を押す。その赤身やトロはもちろんだが、店では稀少部位の「すなずり」や「ひれ下」などが味わえる。

大間産の赤身から大トロまでの塊を手にする秋山さん。おまかせのコースはにぎりとつまみで2万3000円~。

すなずりとは、尾に近い腹の運動量が多い部位。細やかな筋が入り、噛みしめるごとに旨みとふくよかな香りが広がる。ひれ下は胸びれの下で、口に入れた瞬間はふわりと柔らかいが、味わいは濃厚な赤身のようにしっとりとしている。まぐろとはこれほど芳醇な魚であったかと、いつまでもその余韻に酔いしれてしまう。

【日本橋 寿司金】
東京都新宿区荒木町9-15
電話:03・3357・5050
営業時間:17時30分~23時(土曜は~21時)
定休日:日曜、祝日 8席。要予約。
アクセス:東京メトロ丸ノ内線四谷三丁目駅から徒歩約7分。都営新宿線曙橋駅1番出口から徒歩約7分

■3:奥沢 すし 入船(東京・奥沢)の
【稀少部位のにぎり】
――炙ることで生まれる大トロの軽やかな甘み

「大トロあぶり丼」。小鉢2品と玉子焼き、香の物、お椀付き。酢飯には花ワサビともみ海苔が仕込んである。

「私の趣味はまぐろです」と笑顔で話す本多克己さん(75歳)。27歳のときに『すし 入船』を開業し、ほぼ毎日店に立ち、まぐろの味見を欠かさない。鮨種のなかでも、まぐろは特別な存在だという。築地の仲卸『やま幸(ゆき)』から、青森の龍飛崎に近い三厩や大間、その対岸の北海道・戸井などの最上のクロマグロを仕入れる。

大とろの皮部分の肉をそぎ落とす「皮ぎし」などが含まれる、まぐろ尽くしの握りも魅力だが、この店でしか味わえないのが、「大トロあぶり丼」である。

大トロの皮に近い部分を軍艦巻きにする皮ぎし。淡雪のような食感で、軽やかで甘い脂が口の中で溶けるようだ。

「開店当初、大トロを炙って肴としていたのですが、これを丼にできないものかと、試行錯誤しました。大トロを炙るなんて、もったいないといわれながら、今の形になりました」(本多さん)

丼に山盛りにされた大トロは、軽く火を通すことでさらりとした旨さが際立つ。これに深みを加えているのが、青森県産のニンニクをスライスし、醤油に10日間ほど漬け込んだニンニク醤油だ。まぐろとニンニクの組み合わせは目から鱗。酢飯とともに頬張れば、口福の層がいくつも重なるようだ。

大トロを敬遠しがちの諸氏にぜひ味わってもらいたい。

【奥沢 すし 入船】
東京都世田谷区奥沢3-31-7
電話:03・3720・1212
営業時間:11時~22時 無休 57席。要予約。
アクセス:東急目黒線奥沢駅から徒歩約1分。東急東横線・大井町線自由が丘駅から徒歩約10分。

■4:MEGRO(東京・本郷)の
【テールステーキ】
――まぐろの可能性を引き出す創作料理の数々

「MEGROテールステーキ」。4~5人で食べたい。1~2人前用もあり。脂が繊細で食べ飽きない。

東京・本郷3丁目の複合ビルの1階奥、『MEGRO(メグロ)』はまぐろと地酒を楽しめる店である。店長の高橋祐介さん(35歳)は東京大学大学院修了後、化学企業に勤めていたが、義父が営むまぐろ仲卸に転職。まぐろの旨さを広めたいと、まぐろ専門店開業へと舵を切った。品書きには個性的な料理が並ぶ。

「スペイン料理のアヒージョ(※オリーブオイルとニンニクで煮込む料理。)や燻製、まぐろのすり身を揚げたナゲット、西京焼きなど、様々な味わい方で、まぐろを堪能してほしいですね。また日本酒にも力を入れていますので、その組み合わせも、ぜひ」と、高橋さん。

「MEGRO全部盛り」は100kg以上の大きさのメバチの頭肉やのど(頬肉の裏側)、白子など7種類の盛り合わせ。大型のまぐろは脂肪分を蓄えているのでアミノ酸が多く旨みが強いという。爽やかな甘みの珍味の白子はキレのよい酒とともに味わえば、さらりと喉をすり抜ける。

「MEGRO全部盛り」2人前。左から時計回りに、叉焼(チャーシュー)のような食感のハラモ(はらみ)。脇腹の部分を塩を振りオーブンで焼いている。頭肉、ねぎトロ、白子 、のど、トロ、赤身。店名はまぐろの古語めぐろに由来。

続いて運ばれてきたのはメバチの尾をじっくり焼いた「MEGROテールステーキ」。まぐろの持つ野性的かつ繊細な風合いが活きる。

数人で出かけ、多彩な料理を分け合いながら醍醐味に出会いたい。

【MEGRO】 
東京都文京区本郷2-40-13 ベルショップ本郷内
電話:03・5844・6369
営業時間:11時30分~14時30分、17時~23時(土曜・祝日の前日は16時30分~23時、日曜・祝日は16時30分~22時)不定休 45席。夜はなるべく予約。
アクセス:東京メトロ丸ノ内線・都営大江戸線本郷三丁目駅1番出口から、徒歩約1分。
ウェブサイト:http://dal-fish19.com/

■5:まご茶亭(静岡・熱海)の
【まご茶漬け】
――まぐろを引き立てる技ありの京風出汁茶漬け

「まご茶漬け」。小鉢、香の物、甘味、抹茶付き。出汁が少なくなったら注ぎ足し、好みで海苔、ワサビ、胡麻を加える。まぐろの部位による味わいの違いも一興だ。

120名余りの芸妓が今も精進を重ね、古き温泉情緒を残す熱海温泉。三味線や太鼓の音が漏れ聞こえる熱海芸妓見番歌舞練場の隣に立つ『まご茶亭』の看板料理が、熱海芸妓も舌鼓を打つという「まご茶漬け」である。

伊豆地方一帯では「まご茶」といえば、鯵のたたきにお茶を注いだ漁師飯を指すが、京都出身の先代女将が考案したまご茶漬けは、まぐろに昆布と鰹節のみで取った薄味の出汁をかける。

「“まご”とまぐろの語呂合わせで、まぐろを使うことにしたと聞いています」と、女将の鈴木悦子さん(48歳)はいう。

使用するのは南太平洋産のメバチマグロの首から尾まで。厳選した醤油と酒で「ヅケ」にして旨みを引き出している。

「ご飯とまぐろの間に柚子胡椒、塩昆布、あられをしのばせるのもうちの特徴です。家でやってみたけど同じ味にならないよ、とお客様によくいわれます」(鈴木さん)

まぐろの旨みと塩昆布の塩気、あられの香ばしさを柚子胡椒の爽やかな辛みが引き締め、あっさりとして食べ飽きない。生から半生へと刻々と変化するお茶漬けならではの、まぐろの食感が楽しい。

【まご茶亭】 
静岡県熱海市中央町17-14
電話:0557・81・3063
営業時間:11時~15時(最終注文) 
不定休 22席。要予約。カード不可。
アクセス:東海道新幹線熱海駅から伊豆東海バスで約7分、国際専門学校前下車徒歩約1分。

■6:旬味 まゆとろ(大阪市)の
【まぐろづくし懐石】
――様々な料理法で味わい尽くす まぐろを愛する関西の稀少店

「まぐろづくし懐石」。手前はオーブンでじっくり焼いた、カマ塩焼き。脂の乗りがよく旨みが凝縮。好みでポン酢をつければさっぱりといただける。奥はお造りで左上から時計回りに赤身、大トロ、中落ち、頬ほお肉、脳天、中トロ。

大阪市福島区にある大阪市中央卸売市場本場の真向かいに立つ『旬味 まゆとろ』。市場内に店を構えるまぐろ卸売業者が“関西の人にまぐろの美味しさを知ってもらいたい”と開いた割烹で、様々な部位をしっかりと味わえる、大阪では数少ない店である。

朝4時に行なわれる競りで仕入れたまぐろは市場内で捌かれ、厳選した部位のみが昼営業前に店に届く。種類はクロマグロとキハダマグロが主で、産地は国内外を問わず、その日最良のまぐろを提供。

「脂の乗り具合などの状態をよく確かめ、切り身の厚みを変えたり、軽く炙ったりしています」と話す店長の清原由隆さん(48歳)。

箸が止まらない工夫が凝らされた「まぐろづくし懐石」は、お造り、カマ塩焼き、吸い物、炊き合わせなど全8品。お造りには、濃厚ながら後味爽やかな脳天や、歯ごたえのある頰肉など、稀少部位も使われている。また、カマ先を湯がいて脂と臭みを抜き、醤油、砂糖、生姜で煮付けた炊き合わせはこっくりとした甘辛さと相まって、ご飯が欲しくなる一品。

寒くなると吸い物をねぎま鍋にするという季節感も加味。一期一会のまぐろの美味を堪能できる。

【旬味 まゆとろ】
大阪市福島区野田4-1-39
電話:06・6469・1000
営業時間:11時~13時30分、17時~21時(ともに最終注文)
定休日:日曜、祝日 38席。夜は要予約。
アクセス:JR大阪環状線野田駅または、地下鉄千日前線玉川駅から徒歩約10分。中央市場西口そば。
ウェブサイト:http://mayutoro.net/

※この記事は『サライ』本誌2016年12月号より転載しました。年齢・肩書き等の情報は取材時点のものです。(取材・文/関屋淳子、多田みのり 撮影/高橋昌嗣、藤田修平、小林禎弘)

出典:サライ.jp