「よく分からない」じゃ恥ずかしい!鮨屋でワインを頼むなら知っておきたいこと | SUSHI TIMES

「よく分からない」じゃ恥ずかしい!鮨屋でワインを頼むなら知っておきたいこと

ワインのペアリングにも、いろいろと選択肢が増えてきた昨今。

それも見よう見まねではなく、きちんとした知識と仕組みを理解しているというのが、かっこいい大人というもの。

そこで、ワインジャーナリスト・柳忠之氏に、一見意外な組み合わせにも思える、鮨とワインの関係について聞いてみた!

Q.鮨屋でワインを頼む人って格好つけているだけな気もします。あれって実際どうなんですか?

――ねぇ、ねぇ、柳さ〜ん!

柳「おや、クラリン(編集担当の嵩倉)。今日はチコちゃん(某TV番組キャラクター)バリの迫り方だね。「ボーっと生きてんじゃねえよ!」って、言われないようにしなくちゃ。」

――私、酔っ払ってそんなこと言いました(汗)? ところで今晩、友達とお鮨食べに行くんですけど、ぴったりのお酒ってなんでしょう?

柳「無難なところでは日本酒だね。日本酒はアミノ酸がマスクすることにより、生魚の臭みを引き出さないといわれている。でもね……。」

――でも?

柳「炊いた米を食べながら、米からできた酒を飲むんだから、合うのは当たり前だと思わないかい?いわゆる、大きな失敗はあり得ない、定番の組み合わせだよね。」

――確かに。では最近、お鮨屋さんでワインを注文する人も見かけるようになりましたが、ワインはどうです? 単にカッコつけてる気がして。

柳「僕的には日本酒に負けない面白味や可能性も感じられるけど……。」

――そもそも酢飯との相性は? たしか酢酸とワインは相性悪いって言ってませんでしたっけ?

柳「よく覚えてたね(汗)。でもね、江戸時代のようにシャリがおにぎりのような大きさだったり、糖分を加えず赤酢だけで仕上げた酢飯ならともかく、今の鮨はシャリのサイズがどんどん小さくなっているから、全然気にならないと思うよ。」

魚の生臭みとは、錆びた鉄棒についた手の汗

――お寿司とワインを合わせたら、生臭くなって仕方がないという話も聞いたことがあります!

柳「それもネタとワイン次第だね。そもそもだけど、生臭みが出る原因をクラリンは知ってる?」

――いいえ。

柳「研究によると、魚の過酸化脂質と、ワインに含まれる鉄分の結合が原因らしい。魚、とくに青魚にはドコサヘキサエン酸やエイコサペンタエン酸という脂肪酸が含まれている。

これらの脂肪酸は空気に触れて過酸化脂質に変化し、さらにワインに含まれる二価鉄イオンと反応すると、(E、Z)─2、4─ヘプタジエナールが生成され、これが生臭みを発するって話なんだな。」

――ひぃ、文系の私にはちんぷんかんぷんです(涙)。

柳「ボーっと生きてんじゃねえよ!」

――きゃ〜。柳さんに叱られた。

柳「小学生の頃、錆びた鉄棒で逆上がりを何回もさせられたことない? そのときに手にかいた汗の匂いを想像してもらえばいいかな?」

――想像しただけで鼻がもげそうです。

柳「でもね、魚の過酸化脂質って鮮度の問題だから、イキのいい魚をネタに使っていれば、そもそも生臭みは出ないはずなんだよね。」

――たしかにそのとおりですが、近頃は肉も熟成、マグロも熟成が流行りです。

柳「そこよ、そこ。じつは過去2回にわたり、ワイン専門誌で鮨とワインのマリアージュを検証したことがある。テイスターがこれなら合うだろうというワインを持ち寄ってね。」

――して、その結果やいかに?

酵母と熟成させたワインはヒカリモノの生臭み知らず

柳「面白い発見がいろいろあった。カツオやマグロのような赤身の魚には赤ワインと思いがちだけど、意外にも白のほうがよく合ったり、逆に脂の乗った寒ブリにスパイシーな赤が合ったり。

いろいろ寄せ集めたワインの中で、個人的に興味深かったのがレトワールという、フランス東部ジュラ地方の白ワインだったな。」

――ジュラとはまたマニアックな!

柳「だんだん衰退しつつあるけど、この地方のワインは伝統的に、フロールと呼ばれる酵母の膜が張った状態で樽熟成させる。この酵母がワイン中の鉄分と結びついて沈殿するので、過酸化脂質に反応することがないらしい。

それにもともとゆるやかに酸化熟成させたワインだから、鉄分は三価の鉄イオンに変化して生臭くならないんだとさ。」

――ほ〜(わかったフリ)。そのワインととくにぴったり合ったネタは?

柳「驚いたことにコハダ。酢で締めたヒカリモノという難しいネタなのに、ちっとも生臭くならず、ワインがコハダの旨味をきれいに引き出してくれたね。」

――ところで柳さんが好きな鮨ネタって何ですか?

柳「玉子焼きかな。」

――お子ちゃまなんですね(汗)。

たとえば、こんな1本

「レトワール・ヴァン・ブラン2014 ドメーヌ・ド・モンブルジョー」
フランス東部のジュラ地方には、目減りしても補酒せず、フロールと呼ばれる酵母の膜が表面に張った状態で樽熟成させるワインがある。これはシャルドネを2年間、酸化的に樽熟成させたもの。複雑なアロマが醸し出され、味わいも独特だが、慣れると病みつきに。

¥3,800(税別)/横浜君嶋屋 TEL:045-251-6880

教えてくれたのは、柳 忠之さん


■プロフィール
世界中のワイン産地を東奔西走する、フリーのワインジャーナリスト。迷えるビギナーの質問に、ワインの達人が親身になって答える

出典:東京カレンダー