SUSHI TIMES

自宅鮨の始め方 〜準備編〜

鮨を自宅で握ってみたい・・寿司タイムス読者の皆さまなら一度は思ったことがあるのではないでしょうか。
そこで「自宅鮨」の始め方を2回に分けてご紹介します。まずは心の準備を含めた「準備編」から。

鮨への精神的抑圧を打ち破る

料理の中で鮨はやや特殊な立ち位置に位置する料理だ。
鮨は基本的に外食でしか食べないと考えらえているもので、同じ生魚を使うとしても自宅では手巻き寿司しか調理しないという精神的な壁がある。
鮨には難しさ、魚を捌く難しさと、特に握りの難しさのイメージがある。
しかしその2つは極限まで極めようとしなければ案外数度の練習で習得できてしまうもので、そうした簡単な練習を乗り越えると自宅で好きな時に鮨を食べることができる天国が降臨する。

食事会の料理として優れる鮨

自分は自宅で作る料理、作らない料理をある程度決めている。
判断基準は3つあって、1つ目は人数。いつもの来客数(2〜4人)に対して手間がかかりすぎるものは作らないことにしている。仕込みの長い懐石料理やフォンドヴォーが必要なフレンチ、スープの仕込みが必要なラーメン、色々面倒な佛跳牆などがこれ。
2つめは絶対的な料理のレベルで、外で食べたほうが絶対においしい料理は作らないことにしている。天婦羅がこの代表。
3つ目は席を離れる時間で、あまりにも調理に手間がかかりすぎる料理だと来客との話ができず自宅食事会の意味がない。
この3つの理由により、今まではフレンチ・イタリアンを中心に料理してきたが今年からはお鮨を出すようにした。

また、プレゼンテーションとしては自宅で鮨という時点で大きな驚きを持ってもらえれる。
特に小さな子供がいる友人などには喜ばれる(殆どの良い鮨屋は子連れが難しい)。
2,3人いればそれなりの数量を、それも高級なネタを含めて食べることができ、料理しながら話すこともできる。
そして仕事と呼ばれる鮨への工夫の仕方はアイデアの素晴らしさが中心のものが多く、いいお鮨屋さんの仕事を真似ることは案外簡単にできる(もちろん完成度は比べ物にならないが、フレンチのソースを再現するよりは再現度が高い)。
ただの中トロの握りと、色々仕事をした中トロの握りは味がまるで違うが、その仕事は本当に「良い仕事は全て単純な作業の堅実な積み重ねだ」という言葉を実感させてくれるものである。

なお、自宅鮨の厄介な点として、料理人の手が汚れている状態が基本になるので、箸はともかくワイングラスを使うときは足の汚れを洗い物の時に気を付ける必要がある。あと手が荒れて酢飯臭くなる(笑)。

道具

お鮨の良いところの1つは、色々やることになっても必要な道具がさして必要ないこと。一通りそろえても2万程度で足りる。ルクルーゼの鍋1つより安い。

・柳葉:シャープナーを使っていい程度のグレードが気楽に使える。長いと取り回しは悪いが便利。

・シャープナー:砥石は面倒なので・・・

・骨抜き:様々な場面で必須。大きいほうが使いやすい。

・木製まな板:包丁にやさしく、魚が滑らないようにプラスチックでなく木製で。檜は香りがあるので避ける。銀杏のように重いと良いが高い。

・鮨桶:酢飯を作るのに。この大きさで1度に5合(4人分)が上限。

・巻き:シリコンだとかなり楽。

・ステンレスパッド:切りつけたネタを並べておくのに必要。使うときは底にアイスノンをあてるなどして温度をコントロール。

・バーナー(オプションだが強く推奨):鮪、鯖、穴子、肉などを炙るときに多用する。炙りは旨い。

・鮫肌(オプション):使ってみるとわかるが、大きければ大きいほど楽。最低でも大サイズで。

・刷毛(オプション):醤油につけてもらうのではなく、刷毛で塗るだけで崩れが少なくなり本格っぽくなる。小皿が不要になり洗い物も減る!

・ソースパン(穴子のタレ・煮きり・ジュレ用に、オプション)

教科書

魚の捌き方、鮨の握り方などはwebに一通りのっている。

捌き方・卸し方
手前板前(説明がところどころ良くないが・・・)

握り方
手前板前
グルメタウン.NET

が、こうしたwebをいちいち調べるのは面倒でもあるので、高いけどこの本を買うのがお勧めだ。

すしの技術大全

この本1冊を持っていれば、どんな種類の魚を買ってきても、この本を元に捌いて鮨にすることができるという安心感が生まれる。リファレンスとなる本だ。

なお魚をさばいた後の骨や内臓をそのまま捨てておくと翌日死ぬほど臭くなる(特にカワハギ)ので、当日中にごみ袋で二重に包んでゴミに出してしまったほうがいい。

魚自体の知識についてはぼうずこんにゃくさんの市場魚介図鑑のwebと本が極めて役に立つ。

出典:WORLD DIGGER