SUSHI TIMES

【四ツ谷 鮨わたなべ】魚を語らせたら天下一品な学究肌の寿司職人

荒木町に店を構えてまもなく2年。「鮨 わたなべ」は四谷三丁目駅から徒歩5分、新宿通りを曲がって200mの場所に位置する。

MASAYASU WATANABE
渡邉匡康
Age 44
京都の料亭『岡崎つる家』では和食を、そして都内で寿司職人としての修業を経て、40歳になった2014年6月に荒木町に「鮨 わたなべ」を開店。

魚を語らせたら天下一品な学究肌の寿司職人

小体な、しかし佳店がひしめく荒木町界隈は、食の激戦区だ。ここに、2014年6月に自らの城を構えたのが、『鮨 わたなべ』の店主・渡邉匡康氏。

主役たる寿司がいいのはもちろんなのだが、ここでの楽しみは、実はその前の酒肴にあり、だ。寿司の道に入る前、京都の料亭『岡崎つる家』での修業経験を持つ渡邉氏。ゆえに、一品一品に並々ならぬ情熱を注ぐ。

プレゼンテーションの仕方もユニーク。いうなれば“comparison(比較)”。同じカテゴリーの魚、あるいは調理法で2種ずつを同時に出すのだ。たとえば、「白身」は炙った太刀魚と、生のホウボウ。「甲殻類」は、山形のボタンエビと紋別の毛ガニ。あるいは「蒸し物」では脂の乗ったメヌケに花菜を添えたものと、酒呑み泣かせの珍味・コノコを添えた茶碗蒸し、といった具合に。

果ては海苔までも、秋に採れたばかりだという金田湾の新海苔、やわらかな三河湾の海苔、酸で処理をせず素干しにすることで磯の香りがふわっと広がるサロマ湖産の希少な海苔の3種類を、それぞれに合うネタと共に握りに仕立てて食べ比べさせてくれるのだから、脱帽。

つまみも、握りも、客の前に出すときには必ず、産地や味の特徴を言い添える。ほうぼうから探し当てた、優れた素材のことを知ったうえで食せば、より味わいが増すはずだから、と。それが、決して押し付けがましくなく楽しいと感ずるのは、それが、彼の真摯な探究心とホスピタリティの表れであることが明白だからだ。 (文・小石原はるか)

左. イカ、マグロに加えて、この日は旬の春子鯛を握ってくれた。右. 築地市場に仕入れに行く際には同世代の寿司職人と情報交換することが多いそう。予算は¥15,000〜。

鮨 わたなべ

東京都新宿区荒木町7三番館1F
Tel.03-5315-4238
営17:00〜23:00
休 日曜

出典:GQJAPAN