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【新富町 鮨 はしもと】波打つような流れのなかに光る丁寧な仕事

波打つような流れのなかに光る丁寧な仕事

上.脂がのった身をしっかりと〆た小肌。旨みを閉じ込めた赤身のづけ。ツメを塗らずに供する煮蛤。つまみと握りのおまかせ13,000円〜。下. 「毎朝髪をしっかり剃ることで気持ちが引き締まります」と橋本さん。L字型のカウンターのみで全8席。

新富町の静かな一角。修業時代を過ごした下町の風情を感じる場所を選んだ。丸に蔦の家紋と、母による「鮨 はしもと」の優しい文字が印象的な藍色の暖簾をくぐると、凛とした店内が広がる。聞けば、カウンターとまな板はヒバの木で、15年前に福島県郡山市で父が営む寿司屋のカウンターを造るために購入した丸太の残り半分を使用したもの。オープン前には、両親と「日本橋蛎殻町 都寿司」の親方家族、そして親方・杉田孝明氏を店に招いた。

ななつぼし、つや姫、魚沼産コシヒカリの3種をブレンドした酢飯は、一粒一粒の存在をしっかりと感じる。塩と酢をキリッと効かせた酢飯に、きちんと仕事をした種がよく合う。たとえば、蛤の煮汁に2日ほど漬け込んだ煮蛤や、燻した鰆など──。「コースに、香り、温度、熟成などを効かせた種を組み込むことで、単調にならない流れを作ることを大切にしています。食材には限界があるので、いかに仕事をするかが重要なんですよ」

そして、つまみにも唸る。味噌漬けにした牡蠣やほたるいかなど、日本酒がつい進んでしまう肴が供される。「神保町 傳」の長谷川在佑氏と交流があり、発想を得ることもあるとか。握りの手前で、胃袋を掴まれる食べ手が多いのもここの特徴だ。橋本裕幸氏は「お客さまに勉強させてもらいながら、自分の味を確認しつつという毎日です」と謙虚に語る。 (文・外川ゆい)


鮨 はしもと
東京都中央区新富1-15-11マキプラザ 1F
Tel.03-5541-5578
営18:00〜21:30最終入店
休 月曜