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【新橋 第三春美鮨 】楽しく美味しく、ためになる。鮨博士の名物レッスン

江戸前鮨の歴史は、師匠から弟子へと技と伝統が受け継がれ、紡がれてきました。そしてそれは平成の世となった現在も続いており、また新しい歴史が作られています。ここではそんな現在の鮨を生み出し続ける職人のみなさんをご紹介します。

「脂が乗っている鮨ダネには、少し多めに醤油を付ける。それだけで味は劇的に変わります」。少年のように目を輝かせながら、鮨が何たるかを語る長山一夫さん。鮨界の先生、生き字引とも呼ばれるその人に握っていただいたのは、2種の大トロです。「まず青森の大畑産のマグロ。次に和歌山の勝浦産です。全然違うでしょう?」。食感、味わい、とろけ具合。食べ比べてみると、確かに違いが分かります。

知識を学び、実食できる講義は舌にも心にも深く刻み込まれることばかりです。長山さんのお店「第三春美鮨」に訪れたのなら、まずはお品書きにご注目を。産地、漁法、サイズ、熟成日数などが、毎朝1時間半かけて書き込まれているんです。これは、いわば教科書の目次のようなもの。

例えば産地について尋ねると、今昔の名産地の移り変わりから始まり、なぜ美味しい魚が獲れる場所が変わったのか、そして自然環境の問題にまで話が発展します。漁船に乗って漁師さんから聞いた話、大学の研究結果との照らし合わせ、実際に寿司を握ることで感じたこと…。話題は尽きません。

「このお品書きが書けるのは、僕以外にはいないでしょう」。知識だけでなく、仕入れた鮨ダネにも絶対の自信があるからこそ、全ての情報をさらけ出せるのだと長山さんは言います。「世界は刻々と変化し続けている。まだまだ学び続けなきゃいけません」。御年70歳を超えても、衰えを知らない鮨への情熱。更なる高みを目指して探求は続いています。

長山一夫さん

1942年生まれ。早稲田大学の第一商学部を卒業後、すぐに実家の春美鮨にて修業を開始。その8年後には第三春美鮨を出店し、40歳の頃から店の名物とも言えるお品書きを作り始める。寿司の道50年。

扱うワサビは最上級。辛味の奥に甘み、香り、旨みがある
産地の異なるシビマグロ。味の違いだけでなく、漁法やエピソードも楽しみたい
朝締めと3日寝かせた寒ヒラメの食べ比べ。熟成による旨み成分イノシシ酸の変化がよく分かる。特殊フィルムで覆い水分を逃さないため、寝かせたものにも艶がある

第三春美鮨
だいさんはるみずし
住所:東京都港区新橋1・17・7
TEL:03・3501・4622
営業時間:11:30 ~ 13:30、17:30 ~ 22:00(21:30LO)土・日・祝定休

出典:metro min.