<情熱大陸>「築地マグロ仲卸人・山口幸隆」前編 | SUSHI TIMES

<情熱大陸>「築地マグロ仲卸人・山口幸隆」前編

山口幸隆55歳、マグロ専門の仲卸だ。
同じくマグロの仲買人の父を持ち、幼い頃から築地で育った
マグロのプロフェッショナルだ。

名だたる高級寿司店が山口のマグロを求めて通ってくる。

銀座 久兵衛

四谷「すし匠」

「基本的には、いいマグロは全部買う。俺は。余っても全部買う人にはやらない」
と豪語する山口。築地で一番と評されるマグロ仲卸人のプライドを見せた。

全国にいる山口ファン

関東だけではない。大阪にも山口のファンがいた。
「いい物は全て築地に流れる。その中でもやま幸さん(山口の店)のマグロが無くなるとすごく辛いです」
そう話すのは「鮨おおが」の大将、大賀伸一郎だ。

山口の存在は同業者にとっても大きい。
創業120年「越虎」5代目マグロ仲卸栗原豊はこう語る。
「自分が一番だと思ってやってますし、社長自身非常に熱心ですよね
仕事に取り組む姿勢に関しては一目置いています」

仲卸は料理人との信頼関係で成り立っている

ある日、マグロが客の元に届いていなかったという知らせがあった。
従業員に「お客様にマグロがなかったらどうするんだ」とゲキを飛ばす山口。
客先との信頼関係を何よりも大切にして来たからこそ今があると語る。

「マグロに対する想いとか、お客様に対する感謝とか強くなければ何もできない
いくら会社にしてたって、所詮俺ら職人なんだから」

日本の台所、その転換期、仲卸の真髄に触れた。

市場移転まで1ヶ月

190を超えるマグロの仲卸業者の中でも
山口の店はトップクラスの大商いをしている。
寿司だけでも100件近い店から毎日注文があった。

朝5時一番大事な仕事に向かう。
験を担いで、市場までの道順を決めていた。

高額が飛び交う生マグロの競り場。

人気ブランドの大間まぐろをはじめ近海で獲れたもの、海外から空輸されたものなど、
この日は100本以上のまぐろが並んだ。

品定め。目利きの見せ場だ。

「痩せているマグロだね」
「腹は薄いけど魚はいいね」

山口はマグロの尾の切り口から身の状態を読む。
良いマグロは人の体温で脂がとろけ、絡みついてくるという。
品定めは時間ギリギリまで続いた。

競りは騙し合い

生マグロの競りは5箇所で同時に始まる。
「2番はバカみたいに高かったからやめとけ」
山口は一番評価の高いマグロは部下に任せ自らは駆け引きの難しい競りに挑んだ。

日本のマグロはわずか数秒で落札されて行く。
競りは騙し合いだ。経験が物を言う。

結局一番2番のまぐろをはじめ、この日は15本を競りおとした。
総額は2000万円を越えていた。

包丁を入れるまで、本当の良し悪しはわからない

巨大マグロは刃渡り120センチの卸包丁で右・左・背と腹4つに分ける。

山口が半丁包丁を手にした。
注文に応じての切り分け。この仕事は他の者にはやらせない。

競りでどんなに見極めても本当の良し悪しは包丁を入れてみないとわからないという。

「筋が見えない、コントラストがないマグロが美味しい。
ツートンカラーになっちゃうと見た目は良さそうだけど美味しいものマグロには絶対ないから」

脂が多い方が美味しいということは「絶対にない」という。
よく動いた天然物は身が締まり旨味が濃い。

「マグロの味は餌の味、ニシンが餌ならニシン臭。
青魚食えば青魚の味。津軽海峡のスルメイカを食べているのと西の方のミズイカを食べているマグロでは全然違う。
スルメイカって甘いじゃない。だからマグロに甘みが乗る」という。

山口が、大切な場所を見せてくれた。冷蔵庫だ。

マグロは日持ちするため良いマグロがあれば注文以外でも買い付けておく。
だから海が荒れても山口は客の注文に応えられる。

何がなくても「マグロがない」とは言いたくない。
切り売りした残りのマグロにも山口は目を光らせる。
この男、マグロが好きでたまらない。
仕事の合間の食事も毎日マグロだ。

日本の漁師の仕事は素晴らしい

今の時期は海外で取れるマグロの旨味が強いという。
しかし時として、納品されたマグロの状態のひどさにに驚くこともある。

船の上でまぐろを洗浄する際切り口から海水が入ってしまったマグロが届いた、
「一気にこれで何十万も損しちゃうよ。商品として売れないからね」

さらにすごいものが入っていることもある。
穴が空いている。中にあったのはもりの矢じりだった。

「アメリカ人はすごいよね」呆れる山口。
傷ついた部分は売り物にはならない。

「日本のマグロはそういうことはない。
もりは打つんだけど腹は高いとか背の真ん中に打っちゃいけないとか、
そういうことを(日本の漁師は)気をつけますよね。
海外は関係ないからどこでも打つ。腹の一番いいところに打っちゃうから。」

「その辺が日本人の漁師さんと違うよね。日本人の漁師さんは大したもんだと思う」と語る山口。

山口は若い鮨職人の憧れの的

店を持ったばかりの寿司職人が大阪からやって来た。
「鮨おおが」の大賀伸一郎だ。

自分の作ったすし飯を食べてもらい、それに合うマグロを選んでもらう。
若い寿司職人にとって山口は師でありアイドルでもあった。

「大きなマグロが好きな人、小さなマグロが好きな人。
柔らかいマグロが好きな人、硬いマグロが好きな人。
その根底にあるのはその店にあるシャリ。
そこの店のシャリに合わせてこの人にはこのマグロがいいとオススメする」

そんな山口の知識と経験に裏打ちされたプロの仕事こそが築地市場を支えていた。

後編に続く

本記事は毎日放送(MBS)情熱大陸2018年10月14日放送分を書き起こし改編を加えたものです。