SUSHI TIMES

スペインのワイナリー「ライマット」 × 「鮨屋 小野」名勝負数え歌

かたや、鮨とワインを極めようとする男ーー「鮨屋 小野」の小野淳平さん。
こなた、スペインワインの伝道に励む男ーー「レストラン サンパウ」シェフソムリエの菊池貴行さん。
ふたりの熱き男たちがそれぞれの立場で、情熱の国スペインのカタルーニャからやってきた「ライマット」と鮨の異種格闘技戦に挑んだ。

スペインワインの伝道師 菊池貴行

鮨職人 小野淳平

第1試合 カヴァ

RAIMAT
Cava Brut Nature Chardonnay-Xarello  

ライマット
カヴァ ブルット・ナトゥーレ
シャルドネ・チャレロ NV
品種:シャルドネ70%、チャレロ30%

ひとこと by 菊池ソムリエ 
パッションフルーツや洋梨の香りやふっくらとした果実味はシャルドネ、酸はチャレロに由来。カヴァ産地のなかでもライマットの畑は内陸寄りなので、ミネラルが豊富ながら強すぎることもありません。

菊池 ライマットのカヴァは、ドサージュ・ゼロなのに果実のよさが出せて、奥行きがあります。単に酸っぱいだけだと「キレがいい」とは言えますが、ワイン単体として見ればさみしいんですよね。逆に、「完熟したブドウを使えばドサージュする必要がない」と見せつけられるようです。

小野 うちの店では、シャンパーニュもドサージュ・ゼロのものを置いています。甘味を加えていないものこそが本来の味だと思いますので。

菊池 また、店で提供するカヴァは、温度が上がってもバランスが崩れず、やわらかくなるものを選ぶことです。これは大事なポイントで、いちどお客様のグラスにワインを注ぐと、温度は変えようがありませんから。

小野 このカヴァなら、アペリティフから食事の最後まで通せます。深い味わいままのオールラウンド型。でも、とくに合う鮨となると、カヴァのさわやかな酸味から、白身魚、次にこはだが思い浮かびました。

すずき
「すずきは淡泊な食材だけれど、カヴァを飲んでから白身魚の甘味が広がる。わさびのベジタルな薬味感に、ワインの柑橘の香りが合います」

菊池 白身魚のすずきは、わさびが控えめに使われています。辛味でなく風味になっていて、カヴァとあわせるとすごくおいしい。そして、こはだのようなひかりものにもワインの酸が欠かせない。カヴァの畑は温暖な産地にありますが、標高が高く、活き活きとした酸も蓄えます。この酸がないと、鮨の生臭さが出てしまいがちです。

こはだ 
「温暖な産地ながら標高が高いので、活き活きとした酸も含むカヴァ。その酸があるからこそ、こはだの酢で〆た具合とバランスがいい」

小野 こはだは鮨屋の心臓部分のネタです。塩で〆て、水分を出して雑味をとる。さらに酢を加えて、うま味を引き出す。塩と酢が半々のイメージです。

菊池 塩気があるから、カヴァのミネラル感とバランスがとれるんですね。

小野 カヴァのラストは、旬のむらさきうに。カヴァの長い余韻と合わせたくて。

うに
「濃厚で余韻の長いうに。少し高めの温度でもバランスの崩れないカヴァが、うにのヨードの味わいと奥深さに拍車をかけてくれます」

菊池 グラスに注いだカヴァの温度が少し高まってからの濃厚なうに、最高です!

第2試合 ブランコ(白)

RAIMAT
Vol d’Ànima de Raimat Blanco

ライマット
アニマ ブランコ 白
品種:シャルドネ、チャレロ、アルバリーニョ

ひとこと by 菊池ソムリエ
酸がきめ細やかで、気品が感じられます。最初はレモンやグレープフルーツ、ライムの香りが。奥から白い花、白桃、ハーブ、白胡椒も上がってエキゾチックです。余韻にはアルバリーニョのミネラル感も。

小野 ライマットの白ワインは華やかな味わいでしたので、鮨に少し手を加えてみました。まずは、すずきの昆布〆。

すずきの昆布〆
「昆布のうま味成分、グルタミン酸も感じられる鱸。ふくよかでしっとりした味が、白ワインのやわらかい酸味と相まって、おいしさ倍増」

菊池 最初にカヴァといただいたすずきも、昆布で〆るとこれだけ表情が加わるとは。すずき自体のうま味も引き出されます。

小野 そして、白ワインといったら、いか。普段いかは塩か醤油、山葵を使うくらいで柑橘は使わないんですけど、今日は柚子塩を加えました。白のトロピカルなニュアンスに合わせようと思いまして。

やりいか
「いかの甘味を引き締めるような、ゆずの香りが際立っています。ワインが持つ柑橘や南国果実の香りと合わさって、いいバランスに」

菊池 もちろん握り単体でおいしいですが、鮨に柚子を効かせて白ワインと合わせることで、相乗効果が生まれます。もし柚子が使われていなければ、もう少しドライなタイプの白がよさそうです。

しまあじ
「脂の乗り具合が白身魚とは違い、甘味を感じさせながらなめらかで引き締まっているのがしまあじ。ボディのある白とすごくマッチ」

小野 しまあじは、すずきより青魚の風味がありつつマイルドでしたでしょう?

菊池 はい、口当たりがなめらかでした。そして、白ワインは青魚まで幅広く合わせられることにビックリしました。

第3試合 ロゼ

RAIMAT
Vol d’Anima de Raimat Rose

ライマット
アニマ ロゼ
品種:ピノ・ノワール、シャルドネ

ひとこと by 菊池ソムリエ 
かわいらしいロゼ。色合いは淡くて親しみやすく、香りはラズベリー、いちご、オレンジピール、スパイスと続きます。収斂性は少々、洋梨や白桃に似た甘味が抜け、最後はベリーの酸と果実味が残ります。

菊池 幅広く合わせられる、といえばライマットのロゼもそうですね。 

小野 意外とキリッとしたロゼだったので、くるまえびを。茹でたえびの甘味が映えますね。貝は、あわびにロゼを合わせるとあわびが勝ってしまいそうで、シンプルなタイプのたいら貝を選びました。

くるまえび
「えびの甘味と、ロゼのベリー系甘味が相性良。余韻には、えびの香ばしさとワインのかすかなタンニン分がぱっと広がるような印象です」
たいら貝
「貝類のなかでも淡泊な身質のたいら貝。塩とレモンの味付けでスッキリとした食感だからこそ、シャルドネのドライさが引き立ちます」

菊池 それは小野さんのおっしゃる通り。あわびが勝ってしまうのは、この軽やかなロゼを飲めばすぐ分かります。

小野 ロゼ向けの3種目は、あなご。一貫を半分に切って味付けを変化。ワインのストライクゾーンが広く、どちらも合うかと思いまして。塩かタレか、ひとつに決められなかったのもありますが(笑)。

菊池 味わいは異なるものの、結局どちらのあなごも共通して持っている炭焼きの香ばしさを、ロゼのタンニンが広げてくれるんです。だから、どちらもピッタリ!

あなご
「塩柚子と甘タレで半貫ずつ。ロゼに合わせると、前者はあなごの甘味がふわっと広がり、後者は広がったタレのコクが引き締まりました」

第4試合 ティント(赤)

RAIMAT
Vol d’Ànimade de Raimat Tinto

ライマット
アニマ ティント 赤
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、テンプラニーリョ、シラー

ひとこと by 菊池ソムリエ 
フレッシュさと複雑味、ブドウの生命力が感じられる赤。香りには黒いベリー、ざくろ、カカオっぽさがあります。タンニンは中程度ですがイガイガした感じはなく、コクと果実味とでバランスよい仕上がりに。

小野 赤ワインになると、ようやく力強いネタへ。かつおのたたきは、すりおろした玉ねぎを使った醤油風味です。

菊池 にんにく醤油やしょうが醤油はよく聞きますが、玉ねぎとは。

かつおのたたき 玉ねぎソース
「鉄分の多いカツオを玉ねぎの甘味でコーティング。血に似た臭いはさらにワインで抑えられ、燻し香とワインの風味が余韻に残ります」

小野 かつおを藁で炙った風味は、にんにくやしょうがと合わせてもパッとしない。玉ねぎなら、炙った香りとぶつかりません。また、味を濃くすることで、しっかりとしておいしい赤ワインと勝負できます。

菊池 赤のカベルネのベジタルっぽさと、玉ねぎの相性がいい。かつ、かつおの血っぽい風味が、シラーのスパイス感と合います。そして、テンプラニーリョの複雑味が、最後の余韻で膨らんでいくんです。玉ねぎとかつおを組み合わせた、小野さんのテクニックが光ります。

小野 赤身のネタは、だいたい赤ワインを邪魔しないんです。まぐろのづけもそう。次に、醤油ですっきりさせた赤身をどうぞ。

まぐろ赤身のづけ
「赤身の鉄っぽさが醤油でマイルドになり、ワインの深みと果実味に合わせやすくなりました。ワインの少しスパイシーな部分もフィット」

菊池 赤身のづけこそ、鮨屋さんに赤ワインを置くべき理由! あまり酸の強い赤を合わせるのは勧めませんが、日照量の多いスペインの赤ワインなら合うんですよ。

小野 最後は小野スペシャルを。炭火で炙った大トロと刻んだペコロスを、海苔でお巻きしています。うちでは〆に必ずお出しします。

小野スペシャル ~炙り大トロの手巻き~
「トロが上質な牛肉のよう。複雑な味わいで、赤ワインのすべてを受け止めつつ、ワインのカカオっぽさを甘味に変えるほどの力があります」

菊池 ソムリエ泣かせなんですよ、これ。炙った肉っぽいトロのところに、ペコロスの酸やしっかりと巻かれた海苔のヨード感があって。このひと品で、世界が出来上がってしまっている。

小野 ねぎとろと言えばいいんですけど、イメージとしては炭火焼ステーキに玉ねぎを添えている感じでしょうか。

菊池 でも「アニマ ティント」なら、重さがちょうどいいんです。さらにワインをお代わりしたくなりました(笑)。

感想戦

小野淳平さん(右)
「鮨屋 小野」オーナー。ワインに興味を持ってからは、休日になるとワインスクールに足しげく通い、海外で握りのデモンストレーションを行う出張時はワイン生産地を訪問。
「日本酒を飲んでいても、最後はまぐろと合わせ赤ワインを1杯いけたら楽しい」
菊池貴行さん(左)
「レストラン サンパウ」シェフソムリエ。「カバ功労騎士」。東京のスペイン料理店勤務後、スペインでも経験を積む。カタルーニャに本店がある「サンパウ」の東京店には2004年の立ち上げ時より勤務。
「ライマットはカタルーニャ語で『ブドウ』と『手』を意味していて、鮨屋さんにピッタリじゃありません?」

鮨とワインは世界中で楽しまれているペアリング

小野 鮨のことを話す自信はありますが、前にグラスを並べられて「ワインについて話せ」と言われますと、どうにも……(笑)。

菊池 でも、小野さんの店はワインを飲みやすい空間です。営業中の小野さんはカウンター越しにやわらかい接客をされていて、お客様の肩肘を張らせない。すると、ワインが進む。

小野 頑固な親方がいる鮨屋の主張は、「日本酒とビールしか鮨に合わない」。僕もそういう店で修業しましたから、まさか自分が飯台の蓋の上でワインのコルク栓を抜き、カウンターのお客様へサービスする日が来るとは想像してませんでした(笑)。今では半年に1回、自分でワインリストを変更するまでになりましたが。

菊池 鮨とワインは、日本だとまだまだ敬遠されがち。ただ、世界中で楽しまれるペアリングではあります。今のスペインでは、鮨屋さんで箸を使って食事をする高級デートが、若者のトレンドみたいですし。

小野 うちの店には外国人VIPもいらっしゃいますが、鮨を食べ慣れている海外のセレブには、鮨とワインを合わせるスタイルが自然だと認知されています。

菊池 その点、日本人のほうが固定観念に縛られているのかも。

小野 ワインを頼まれる日本のお客様からも「小野さん、やっぱり鮨には白ワインでしょ?」とはよく尋ねられますねぇ。

菊池 なら、泡、ロゼ、赤に合う鮨をこの企画でご紹介できてよかったです。

ライマットは試飲すると握る鮨が頭に浮かぶ

小野 じつは今まで僕、それほどスペインワインに触れてこなかったんです。でも、試飲すると握る鮨が一瞬で頭に浮かぶライマットのワインは、使い勝手がいい。

菊池 鮨と相性抜群な理由のひとつは、スペイン人が日本人と同じくらい魚介類好きなこと。まぐろ、かつお、いか、たこまで食べるし、えびの消費量も高い。表面を少し炙っただけのレアな料理もある。ふたつめの理由は、どのスペインワインも酸が柔らかくクセがないこと。

小野 背景にある食文化とワインの味わいが、鮨向きなんですね。

菊池 では、数あるスペイン産のなかで、なぜライマットなのか。それは、小野さんの鮨とライマットに共通項があるから。

小野 ??

菊池 小野さんは鮨ネタを大切にし、「99%は素材の力です」と謙虚でいらっしゃいます。ライマットも自然第一で、ブドウの力を大事にし、畑では出来る限り自然な環境を守っています。現地の畑へ行きますと、野生の小動物があちこちにいる。ブドウにとって益虫のテントウムシも、1匹2匹ならカワイイんですけど、「うっ」ってなるくらい大量にいる(笑)。それくらい、畑に生命力がありました。

小野 一流ソムリエである菊池さんから、鮨とライマットの共通点やペアリングコメントまで教えていただけて、今日はとても勉強になります。僕は頑固職人ではあるけど、新しいものもどんどん取り入れたいと願っていますので。

菊池 小野さんの人柄なのか、優しさにあふれた鮨の味と、酸が尖り過ぎてなくて親しみやすい、ライマットのワインは、最高の組み合わせだと思います。あと、ライマットはカタルーニャ語で「ブドウ」と「手」を意味していて、アニマ・シリーズのラベルには手を描いたタイルの模様が描かれている。これも、鮨屋さんにピッタリじゃありません?

小野 なら、僕が鮨を握っている手も、ラベルに入れてほしいなぁ(笑)。


鮨屋 小野
住所 東京都渋谷区恵比寿4丁目11−8−B1 
tel.03-3441-5524
営業時間 18:00~24:00 (L.O 23:00) 
休日 日曜
※今回ご紹介したライマットのワインは、8月10日より期間限定でご用意しております。

ライマット(RAIMAT)
1914年に設立された、ヨーロッパで最大規模の自社畑を所有するワイナリー。RAIMATは、カタルーニャ語で「ブドウ」と「手」を意味する。
100%有機栽培に転換中で、2019年には使用するすべてのブドウ畑でオーガニック認証を取得予定。実現すれば、ヨーロッパ最大規模の有機栽培認定ブドウ畑になる。
消費者がワインを選びやすいように、「凝縮感」と訳される「インテンシティ(intensity=強さ)」という概念を導入、10段階に分けて、自社ワインを類別している。

出典:wine-what