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【モテる宿にはワケがある】 琵琶湖畔の一軒宿で、文人も愛した絶品の鮒寿し懐石を味わう

江戸時代に築き上げられた琵琶湖湖畔の石積みの上に建つ一軒宿「湖里庵(こりあん)」。一般的な観光地では体験できない静かで豊かな休日を過ごせます。名物の「鮒寿し」は一度は食べておきたい絶品郷土料理です。

琵琶湖の北西岸に佇むお宿、「湖里庵」は湖に面した料亭旅館。ちょっと変わった名前ですが、この響きにピンと来た方はなかなかの文学ツウ。お察しのとおり“湖里庵”は“狐狸庵”と同じ読み方。狐狸庵先生、つまり作家の遠藤周作氏がこちらの名付け親というわけ。その遠藤氏がこちらを訪れるようになったきっかけが、鮒寿しです。

鮒寿しは、現存する最古の寿し。しかし、遠藤氏、かつて食べた鮒寿しの味に「古来より受け継がれている日本の食がこんな味のはずがない」と納得できずにいたのだとか。それが、知人の紹介で「湖里庵」を訪れたところ、その鮒寿しにすっかり魅了されてしまったというのです。食事処には、遠藤氏が直筆で宿名を記した掛け軸もあり、その深い関係が偲ばれます。

奥琵琶湖の自然に育まれた名物を堪能

さて、遠藤氏を魅了した鮒寿し。「湖里庵」の出自である「魚治」が約230年前から作り続けている奥琵琶湖を代表する郷土食。琵琶湖でしかとれないニゴロブナを使っています。通常、1年熟成で仕上げるものをこちらでは2年かけて寝かせるため、コクのある酸味と旨味がしっかり凝縮されており、つい日本酒に手が伸びるお味です。

その鮒寿しを食材とし、懐石料理で提供しくれるのが「京都 吉兆」で修業を積んだご主人。チーズ感覚で使ったり、時にアンチョビ代わりにするなど、鮒寿しがもつ可能性を活かした料理の数々は、新鮮かつ驚きの連続です。

また琵琶湖ならではの小ぶりな鮎やビワマスなどといった湖の幸は、この地に受け継がれる食文化。ご主人曰く、それを次世代に伝えるのが自身の役目、とか。
さらに、 そんな料理を引き立てるのが信楽焼きの器の数々。特にこちらでは釉薬にビワパールのイケチョウ貝をまぶした、珍しい白い信楽焼きが堪能できるのですよ。
これは、もう、赤でよし、白でよし、泡でも、地酒でも。宿には、すべて整っております。

何をするでもない贅沢な非日常の楽しみ

さて、この鮒寿し懐石、味わえるのは1日たったひと組のみ。そうです、こちらは宿泊客をひと組しか受けない隠れ宿なのですね。ゆえに建物も1階が食事処、2階が客室というシンプルな造りで、お籠りするには最高の空間。
目の前には穏やかに波を寄せる琵琶湖があり、水は抜群に透明度が高く水遊びだってできてしまう。そして湖面を吹き抜ける風は、潮風と違い、サラリと心地よく頬を撫でてゆく。そこに大切な人とふたりきりとなれば、もう必要なものなんてありませんよね。

もしお籠りに飽きたら、知られざる歴史的名跡が点在する、宿前の街道を散策するのも楽しいはず。何をするでもなく、地元の日常に溶け込むという最高に贅沢な非日常の楽しみ方が「湖里庵」には残されていました。

鮒寿しや湖の幸を食材とした料理の数々は、美しさと美味しさに満ちています。上は、「鮒寿しのチーズ包み」。
「お造り鮒の子付き」。鮒のお造りに塩ゆでした鮒の卵をまぶしたもの。
「琵琶湖の前菜」。奥が鮒寿し、右が琵琶湖で獲れた手長えび、左手前は二十日大根と銀杏。
「ふろふきかぶら」。かぶを菊の花にように飾り切りし、内側に卵味噌を詰め、おだしで炊いたもの。
「すずきと冬瓜のお椀」。酒蒸ししたすずきとおだ しで炊いた冬瓜に、千切りにした茗荷をのせて。
「えび豆」。滋賀の郷土料理で、琵琶湖のえびと大豆を一緒に炊いたもの。
「氷魚(ひうお)の釜揚げ」。冬にしか食べられない鮎の稚魚の釜揚げ。

◆湖里庵
住所/滋賀県高島市マキノ町海津2307番地
アクセス/名神高速道路・京都東IC~国道1号~161号
URL/http://korian.jp
ご予約・お問い合わせ/☎0740-28-1010

●料金/3万円〜(1名1泊2食付き)

出典:Leon