SUSHI TIMES

夏に食べるべき寿司講座:今こそ旨い、必食の寿司ダネとは?

魚介に旬があるなら、当然寿司にも旬がある。「今の時期こそ、これを」と頼むネタを知っておけば、寿司屋通いも断然楽しくなろうというもの。

今回はランチの海鮮丼でも有名だが、江戸前の「まっとうな寿司」が頂けることで人気の店、銀座『鮨 からく』へ赴き、夏だからこそ食べるべき寿司について、店主の戸川基成(きみなり)氏に話を伺った。

(ちなみに、「ネタ」という言葉は「タネ」が転じた言葉遊びが広まったもの。本来は「寿司ダネ」という呼び方が正しいことも覚えておきたい。)

旬を盛り込んでもらった、江戸前にぎり「真味」8,000円。通常はウニが入らず、13貫。職人技が光る江戸前寿司をリーズナブルに楽しめる人気メニュー。

泣く子も黙る高級ネタ「新子」は、短期間、超限定の旨さ!
初夏に食べたい寿司の代表格といえば、なんといっても新子だろう。梅雨の時期に旬を迎えるため、寿司好きなら今ちょうどそわそわしているころでは?

光りものの中で最高級とされる新子は、ニシン科の魚であるコノシロの稚魚のこと。人気ネタのコハダも新子同様に成長するとコノシロになるが、新子の場合は体長4~10cm弱と、より小さいものだけを指す。

一貫に対して新子が6枚付けなど、枚数が多いほど、魚体の小さい“走り”の新子を贅沢に使っているということが分かり、粋を感じさせてくれるのだ。

水揚げされる期間が短く、すぐコハダへと成長してしまう新子。

まだ生まれて間もない魚ゆえ、柔らかく味もほのか。仕込みのよしあしがはっきりと出てしまうため、「とにかく職人の腕前が試されるネタですね」と戸川氏。

口に入れるとはらりとほどけ、あっさりした中に光りものならではの香りがふわりと広がる。もちろん、酢の加減も最高だ。

値が張るものの、やはりコハダとはまったく違う繊細さ。唯一無二の味わいを堪能しながら、夏の訪れを感じたい。

房総半島産で水揚げされた大ぶりのアワビを、ふっくらと蒸し上げて。一度塩を振り余分な水分を抜いてから蒸すことで、より旨みが増す。

新子だけじゃない!穴子にアワビ、アジにスズキも夏が旬
“キング・オブ・夏寿司”の新子だが、旨みが乗った味わいの旬を楽しむというより、希少性の高い旬の“走り”を楽しむためのネタといえるだろう。もちろん、夏に美味しさのピークを迎える寿司ネタは色々と存在する。

まずアワビに関しては、夏の旨さは格別。9月頃の産卵シーズンを前にたっぷり栄養を溜め込むため、味も食感も増してくるのだ。ぷくぷくとふくよかな姿が、またなんとも艶っぽくたまらない。

『鮨 からく』では生アワビでも煮アワビでもなく、独特の食感を残しつつ旨みをぎゅっと閉じ込めた、蒸しアワビを握りにしている。ひと口で食べられるギリギリ最大の大きさだろうか。旨みの塊を頬張れば、誰もがしばし無言となるはずだ。

一番左から時計回りに穴子、タコの桜煮、アワビ、アジ、鯛の胡麻和え、スズキ。どれも江戸前の仕事ぶりが見た目からも伝わってくる。

夏の旬といえば穴子もはずせない。梅雨どきから夏場にかけて豊富になるプランクトンをたっぷり食べ、味が乗ってくるのが夏なのだ。 東京湾で獲れるものが最上級とされる。

「穴子はスピード勝負の魚。とにかく鮮度のいいものを仕入れ、酒、醤油、味醂、砂糖を合わせた煮汁で20分ほど煮たものを握ります」と戸川氏。『鮨 からく』の穴子寿司は、ふんわりと柔らかな口溶けに優しい甘みのツメが絡み、まさに口福!

産地や種類によって旬が異なるウニだが、濃厚で甘みの強い“赤ウニ系”の中でも味がよく高価なエゾバフンウニは、夏が盛り。

他に夏にオススメなのはアジとスズキ。脂身が上品なアジは薬味を乗せてさっぱりと。弾力のある食感が特徴のスズキは噛みしめて味わいたい。

「アジは塩と酢で、スズキは昆布締めにしてそれぞれ1日ほど熟成させます」と戸川氏が語る通り、白身ネタにもしっかりと江戸前の仕事を施すのが『鮨 からく』流だ。

こちらで絶対にお得なのはおまかせの盛り合わせ8,000円。中トロやマグロの漬け、鯛の胡麻和えや玉子焼きなどの定番のほか、季節のネタが色々と盛り込まれたセットだ。

上記のほかにも、初夏が旬のマダコを4~5時間も煮て仕上げるタコの桜煮、北海道産のバフンウニなども、夏が旬。この時期の美味しさが詰まった宝箱のようなひと皿だ!

出典:東京カレンダー