SUSHI TIMES

海外で寿司職人として働きたい!


日本を離れて働く人が年々増えています。外務省の統計「海外在留邦人数」によると、2016年には3ヶ月以上日本国外に長期滞在する邦人の数が過去最多となり、130万人を超えました。(1
33万8,477人人・昭和43年統計開始以来最多)
日本国内でも働き方が多様化しているように、「海外就職」の形も多様化し、どんどん敷居が低くなってきています。

以前は情報も少なく「海外で働く=駐在員?」というイメージが強かったかもしれませんが、今では海外就職に特化したメディアや就職・転職エージェントも増え、新卒・中途を問わず現地の企業に直接応募することが簡単になりました。

「寿司職人」もその選択肢の一つとなっています。ここ数年で寿司職人として海外で働こうとする日本人は年々増加しており彼らを対象にした寿司職人養成学校も次々に設立されています。

では寿司職人として海外で働くときにはどんなことに気をつければ良いのでしょうか。

 

「ビザ」がおりないと始まらない


ほとんどの国が長期滞在する外国人にビザの取得を義務付けています。
しかし、海外で働きたいという想いばかりが先行してビザのことをすっかり頭から抜けている…なんて人もたまに見かけます。
海外で働くならその期間に関わらず就労ビザが必要となるケースがほとんどですので、事前に調査しておきましょう。

就労が許可される主なビザの種類

・ワーキングホリデービザ
一定年齢の人(多くの国が30歳以下)に付与されるビザで、海外での文化体験を行うために
一定期間滞在を許可され、一定の条件内の就労も許可されます。年齢的に条件内の方にとっては取得しやすく渡航後の行動の自由度も高いビザです。
・就労ビザ
現地で働くことを許可されるビザです。ワーキングホリデービザを取得せず働く外国人の多くがこのビザの取得を求められます。
多くの場合自分が働くことになる企業(=スポンサー)の推薦と金銭的バックアップが必要になります。
・家族、配偶者、婚約者ビザ
現地に国籍または永住権を保有する人と結婚または婚約をするとビザが与えられることがあります。
永住権
ビザではありませんが、永住権があればほぼ現地の国民と同じ権利が与えられます。
まずはビザを取得し、数年〜数十年現地で働き、一定の基準が満たされている人に国が許可を出せば「永住権」を取得することができます。
人によりますが取得まで年月がかかるため、就労ビザ等で現地に入り結果的に長期滞在した方が取得するケースが多い権利です。
また永住権は一般的にその国の国籍と同等の権利を持てる場合が多く、開業などする場合には非常に有利だと考えられています。

 

ビザの申請(許可)難易度は国によって違う


ビザ取得が難しい国として有名なのはアメリカ、フランスあたりでしょう。
行きたい人が多いメジャーな国=ビザのハードルが上がると言っても良いかもしれません。
また、その国の政権や移民・外国人労働者への方針によって異なることも。
例えばアメリカならトランプ政権前とあとでは日本人の就労ビザ取得難易度が大きく違うとの意見も多くあります。
反対に、ビザが取得しやすい「穴場」の国もあります。例えばヨーロッパならドイツ。現政権が移民に寛容で、かつ寿司ビジネスが発展途上にあるため
特に日本の寿司職人は就労ビザが取りやすいとも言われています。(2018年3月現在。)
インドやマレーシアなどといったアジア諸国も寿司ビジネスが発展しているわりに日本人が少ないということでビザの取得難易度は高くないようです。

 

なんでもやれる人が重宝される


日本では小僧のうちから修行に入って「飯炊き3年、握り8年」で一人前なんて言われますが
海外ではそんな悠長なことをいっていられません。ほとんどの店で即戦力を求めています。
寿司職人として働く場合には握りができるのか、巻物だけなのかといった技術レベルでも大きく待遇が変わってきます。
例えばオーストラリアの某寿司レストランでは、巻物専門の職人は時給1000円程度で、捌きや握りができる職人(=カウンターに立てる職人)は月給40万円以上というような例もあります。当然のことながら、寿司はカウンター商売ですから語学もある程度できる人材でないと接客ができません。
もちろん海外で初心者として寿司を学び年月を経て成長していく選択肢もありますが
やはり寿司全体のレベルを考えると日本で数年本格的な寿司を学んだ方が効率が良いという意見もあります。
ワーキングホリデーで(たまたま)寿司レストランで働いた経験から、「これはしっかり技術を身につけないと上に上がれない」という気づき、一から日本の寿司店で修行をし、再度海外で就労ビザを得て渡航するという例も少なくありません。

海外では実力主義で、経験年数より本人のポテンシャルが問われます。
決められたことしかやらないというタイプの人より、任されたことをなんでも厭わず取り組めるような精神的にもタフな人の方が必要とされている言って良いでしょう。

 

現地の好みにあわせていく


寿司職人たるもの、日本の伝統的な江戸前寿司を握るべきであるというポリシーの職人さんも多くいます。もちろんそれ自体は素晴らしいことで、尊重されるべきなのですが、海外にでると日本とはマーケットが違うことを忘れてはいけません。
まずは現地の人の味覚を知り、好まれる味を見つけていくこと。
さらに現地で調達しやすい食材を活用することも重要です。
極端な例ですが、ドバイの寿司店などはイスラム教信者のお客さんも多く、「ハラール」という彼らの宗教の教えに準じた食物しか提供できません。
醤油ですら、酒が禁止されている彼ら専用に作られた醤油でないと受け入れてもらえません。そうなると醤油の味に合わせて寿司も変えていく必要が出てきます。
江戸前寿司にこだわりすぎて、日本人だけに好まれる味を出す店は長続きしないでしょう。

 

収入は日本より高いことも


海外で寿司職人として働くメリットの一つに、「収入」があげられるでしょう。
日本では多くの場合が月給10万円後半〜20万円台の月給からスタートする寿司店がほとんどですが
例えばこれがオーストラリアだと、月給20万円後半〜と相場がぐっとあがります。
最低時給が1時間あたり17.29ドル(日本円で1530円程度)と定められているからです。 (2017年1月現在)
またその国の物価が標準報酬に影響するため、スイスで働く日本人の中には寿司職人になって3年目で年収1000万円を超えたという人もいます。

また、欧米諸国では労働者の権利が日本より強く保護されているため、残業が少なく休みが取りやすいという意見もあります。
当然、物価の高い国では家賃や生活費もも日本より水準があがりますが贅沢をしなければ日本で働くよりも時間や体にゆとりをもって生活ができる環境とも言えるでしょう。

反対にアジア諸国では収入は日本よりも下がります。その分、生活費が抑えられるメリットもあるのでどちらに重点を置きたいかよく考えておくと良いでしょう。

 

記載されている情報は2018年3月現在のものです。各国の渡航手続きやビザ取得の条件に関しては各大使館にお問い合わせください。